4.オーガニックランキンサイクル。5.塩素処理は難しい。6.火床面積と炉床面積。

4.オーガニックランキンサイクル。

 

 加熱源(ここでは70~90の熱湯)により沸点の低い媒体(作動媒体・有機媒体)を蒸発器(熱交換器)で加熱、蒸発させてその蒸気でタービンを回し発電する方式である。加熱源と作動媒体の二つの熱サイクルを使って発電することから、バイナリー(二つの要素からなる)発電サイクルと呼ばれる。低沸点の作動媒体を使うことで、工場廃液や温泉などの熱エネルギーを放置することなく電気エネルギーに変換出来、低エネルギーの回収が可能にる。
 

 使い終わった媒体は凝縮器(熱交換器)で冷却水と熱交換して、また蒸発器に戻される。そのため外部とは接触することがなく、熱交換するだけの密閉空間となるため、外部に公害的な影響を与えることがない。作動媒体としては普通のタービンの場合は水を使うが、マイクロバイナリーの場合は有機媒体にオゾン破壊係数0のフッ素系、不燃性不活性ガスが使用される。

 

 

5.塩素の処理は難しい。

 

 焼却炉で一番難しいのは何か?と聞かれたら私は間違いなく塩素の処理だと答える。塩素は水素や酸素と同じく元素である。元素の中でもフッ素などと同族のハロゲン元素と呼ばれる。
 塩(NaCl)という安定した状態から電気分解で塩素を取り出したのは人間である。だから自然界の生物は塩を必要としても、塩素を無毒化できず塩素の毒性によって滅ぼされる。初期の除草剤や殺虫剤はそれを利用したものだが、今はダイオキシンの生成や犯罪に使われたり誤飲の危険性もあり、いろいろと工夫されている。しかし、刈り取られた草、生木を燃やす場合は十分な注意をしていただきたい。ベトナム戦争における枯葉剤は明らかに塩素を含んだ産物であることは確実なのだ。
 

 高温の焼却炉の中に入れば塩化ビニールは勿論、台所の醤油やサランラップも分解されて塩素が発生する。廃掃法では800以上で燃やさなければならない、と義務づけられているが、この温度が塩の融点(800.4℃=NaイオンとClイオンが分解する)と合致しているのは、単なる偶然なのだろか。私は作為的なものがあると感じられてならない。「塩化ビニールをなくせばダイオキシンの発生もなくなるのでは?」という質問に、塩化ビニールはなくなっても「醤油がなくならない限り塩素は発生する」と答えた役人の言葉を思い出す。自分の無知が恥ずかしくないのだろうか。塩化ビニールをなくせば廃棄物の処理は大いに助かるのだが、なぜ無くならないのだろう、ダイオキシン塩素がなければ発生しないのだ。

 

(追記)塩素は親水性だから水に溶け込む。バグフィルターを使う焼却炉は必ず冷却塔で水を噴霧するし、サイクロンスクラバーも水を噴霧する。燃焼ガス中の塩素は水に溶解することになり、この余剰水を再噴霧する場合も、外に放出する場合も必ず苛性ソーダーを使って中和しなければならない。塩素が溶け込んだ希塩酸は再噴霧の場合はノズルや配管を腐食するし、外部に放出すればそれは犯罪であるから、絶対に避けてほしい。必ず貯水プールを造って苛性ソーダーで中和し、水を中性にし無色透明にして放出しなければならない。緋鯉を飼育して、その池から放出している場合を見たが、コイ目コイ科の魚は酸性に強いようだ。酸性雨(pH5.5以下)でも平気の様だし、青森県の宇曽利湖(pH3.5)にはウグイ(コイ目コイ科)が生息していると聞く。

 

 焼却炉において塩素を処理する方法は、消石灰塩素の含んだガス中に噴霧して塩化カルシウムにして安定化させる。同じく苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)を噴霧して、安定した塩化ナトリウム(塩)にする。考えたらバカな話だ。塩水からナトリウムを取り出して金儲けをした人間がいて(ナトリウムは原発にも使われている)産廃業者はそれを買い、使って元の塩に戻す。誰が儲けて誰が損をしているのだろう。

 

(追記)ナトリウム欲しさに電気分解した人間は、残留物である厄介な元素(Cl)が残り、この厄介な廃棄物は処分に困る。それを使って塩化ビニールという有益な高分子を日本の賢い化学者が発見した。原料はタダ以下の物であるから、原料費の安い塩化ビニールはお得なプラスチックとして一気に世界に広まることになる。この塩化ビニールは有益な特性をもち、安価のみならず「透明性⌋「柔軟性⌋でも抜群に便利で他のプラスチックに追随を許さない。一般の庶民は先輩の「ナイロン」にかわり「ビニール」がプラスチック全般の代名詞にもなった。しかもこの厄介者は殆ど永久に腐らず、海洋に投棄されると海洋生物に甚大な影響を与え続けることになる。
 
 

 ともかく、塩素ガス(実際は塩化水素)を処理するのは厄介だ。塩素ガスは金属(鉄・ステンレス)を腐食させるのみならず、アルマー加工やキャスタブルさえ削り取られる。これに対する方法はないものだろうかと悩むこの頃である。人間が自然界から取り出した塩素に、人間が苦しめられる塩素取り出し防止法でも出来ないものだろうか

 

 

6.火床面積と炉床面積。

 

 ロストルのことを火格子(ひごうし)という。この火格子の面積を火格子面積または火床面積という。法律はこれをかしょうめんせき」と呼んでいるようだが、この火床は日本語で「ひどこ」「かしょう」どちらも間違いではない。だから廃掃法の施行令に書かれている火格子面積2㎡はこれにあたり、もし火格子が無い炉は火格子が欠損している焼却炉炉床面積と読むのが正しいようだ。
 

 小型炉の基準となっている2㎡以上未満はこの判断である。だから火格子より上部は規制を受けていないので面積を広げてもよい。但し、斜めの壁で広げた場合はそこに空気穴があいていると、これは火格子と解釈され、その投影面積が火格子面積に加えられるので、要注意である。
 一方炉床面積と法律に書かれている場合は、勝手な解釈で広げることは出来ない。炉の内側の最大投影面積が0.5㎡以上あると、小型炉としてダイオキシン測定義務を持つ焼却炉となる。の断面積0.5㎡未満の場合は0.7m×0.7mでよいが、特に寸法が計りやすい投入口や灰出し口あたりで断面積が0.5㎡を越えないように注意することだ。
 

 小型炉は時間200kg、一日8時間で1600kg以上燃やせないので、これ以上の焼却処理量としてのマニフェストは発行できないこれで廃棄物処理業として、商売になるのだろうかという事だ。よく承知しておいて貰いたい。