30.専焼と混焼。31.水の蒸発潜熱。32.灰の熱灼減量。

30.専焼能力と混焼能力  

 

 14年対応以前の焼却炉で、申請の段階で5ton未満/日の焼却炉を、一日の処理量4900kg/と記載した覚えはないだろうか。私も何回か書いた覚えがあり、県の担当者からいやな顔をされた。その頃は混焼能力を問われていて、木くず50%、紙くず40%、繊維くず10%とか書いていた。

 廃プラはその頃でも一日100㎏しか、燃やせなかったから90㎏/日だけを追加して、5000kgのうちの90kgだから、廃プラ1.8なんて書いていた。廃プラも混焼できる焼却炉と、宣伝していたメーカー(炉を製作する)もユーザー(炉を燃やして使用する)も多かったと思う。多分、法律の穴を突いた手段だったのかもしれない。私もその頃は焼却炉1台に一つの計算書ですませていた。それが木くず50%、紙くず30%、繊維くず20%で、たまには廃プラ数%で計算した、混焼計算書だった。 

 

 今はどこの県でも混焼計算なんて受付けない。炉の処理能力8時間(1日)3000kgとあり、品目に木くず紙くず廃プラと書いてあれば、木くずで何キロ燃やせますか、廃プラで何キロ燃やすことが可能ですか、と問われる。木くずを1日3000kg燃やせる炉で、廃プラは90kgしか燃やせませんとは言えないだろう。処理業者が強引に「廃プラは90kgしか燃やさない!」と言っても、技術者や行政書士が言える訳がない。

 

 廃プラ低位発熱量8000kal/kgであり、木くずの低位発熱量3000kcal/kgとすると、炉の容積と熱負負荷率によって、処理量は計算可能である。だから木くずを3000kg/燃やせる炉なら廃プラ3000×(3/8)1125kg/燃やせる計算になる。空気量やバーナーの油量によって少しは変わるが、だいたいこのようなものである。これが専焼能力であり、専焼計算書は木くず、廃プラによって数値が違い、別々のものになる。だから、専焼計算書は品目の数だけ必要となる。炉に余裕があれば、低位発熱量の大きいものを基準にして、処理量もバーナーの油量、押し込みファン、誘引ファンの能力も決めるべきである。 

 

 

31.水の蒸発潜熱。 

 

   簡単な問題だが、1㎏の水を1℃だけ温度を上げようとすれば、何kcalの熱量が必要か、と問われたら何と答えるだろう。勿論、誰もが1kcalと答えるだろうが、約1kcal と答えるのが正解である。1気圧の状態で1㎏の水を1℃上げるには温度ごとに少しずつ比熱が違う。0℃の水では1.008kcal熱量が必要だし、30℃の水では0.998kcalでよい。だから1気圧の状態では、約1kcalとなる。 

 

 では、㎏の水を蒸発させようとすれば何kcal熱量が必要だろうか。焼却炉で物を燃やす場合は、燃焼物に含まれている水分の量を考える必要がある。この水分を蒸発させる熱量を気化熱という、100℃の水をg蒸発させるためには2257ジュールの熱量が必要であるから、㎏の水では2,257,000ジュールとなる。1kcal4,186ジュールであるから、539.18kcalとなり、この熱量を気化熱とか蒸発潜熱という。 

 

 1㎏の水を℃上げるのは1kcalでいいが、100℃の水をあと℃上げるには約539kcal熱量が必要となる。だから、燃焼物に何パーセントの水分が含まれているかによって、燃え難さが決まるのである。廃プラの水分は程度であり、木くずは15であるから廃プラはよく燃えるものとされる。一方都市ごみは48%~52であり、おむつ使用済み65動物性残渣では68であるから、30%以上のものは燃え難いものと考えられる。この燃え難さの原因は、水の蒸発潜熱の影響と考えていい。

 

 

32.灰の熱灼減量。

 

 焼却残渣を600℃で3時間、加熱して焼却灰煤塵などを燃やし、蒸発させて減量分を測定する。この場合、焼却残渣中に燃え殻や有機物が残っていると、熱灼減量が大きくなる。廃掃法の施行規則第四条の5には焼却灰の熱灼減量が10%以下になるように焼却すること」とある。最終処分場で10%以上の煤塵焼却灰は受け付けてくれなくとも、この法律がある以上文句は言えない。 

 

 熱灼減量が10%より大きくなる場合、これは決して焼却炉の構造だけの問題ではなく、焼却炉の管理士や運転する人が起こす問題でもある。焼却炉の炉床を水冷にするようなものは絶対にないだろう。どんな焼却炉でも、蓄熱がよいように炉床は必ず耐火材で作ってある。だから焼却炉が停止しても炉床は600~700℃くらいの温度に保たれており、灰中に未燃物があっても、空気が絶たれない限り燃え続ける。 

 早く焼却炉を停止させたいとの目的で、散水での温度を急激に下げたりすると、熱灼減量10%以上のケースが生まれる。焼却炉が停止しても、焼却灰は自然のままで放置されたほうがよい。できれば供給空気を1/21/3にして、炉内温度が200℃くらいになるまで、誘引ファンを20%程度で回しておくほうがよい。 

 

 煤塵はどうだろうか。投入時に舞う未燃の煤塵が誘引ファンに引かれて、集塵機に捕えられるケースがある。だから煤塵焼却灰ほど大きくないが、数%の未燃物が含まれる可能性がある。だから煤塵が燃えないとは絶対に言えない。私の経験から言えば、バグフィルターで捕えられた煤塵が燃えたケースを知っている。冷却したと思われた煤塵を、可燃性の袋に入れて積み上げておくと燃えだしたとか、トラックの荷台に積んでいた煤塵が燃えたということだ。 

 

 発熱は多分煤塵内に含まれている金属分が灰の炭素分と反応して酸化熱を発した(携帯カイロと同じ)ものと思われる。焼却灰煤塵も熱灼減量が0ではありえないので、発火するというリスクがあることを忘れてはならない。

 

追記灰が発火した場合は、空気を断つ、をかけて温度を下げるかしてください。空気を与える空冷は絶対に避けて下さい。