52.バーナーの燃料。53.ガス測定とDX測定。54.二酸化炭素の有効利用。
52.バーナーの燃料
最近、バーナーの燃料として、都市ガスやプロパンガスを使いたいという話が多い。私は臆病にも体験を話して危険ですから、慎重に検討して下さいと言う。日本の焼却炉は灯油を使っているものが多い。稀にA重油を使っているものもあるが、S分の多い油は、基本的に避けている。県によっては絶対に許可して貰えない。
確かに灯油よりガスの方が発熱量も高いし、灯油が手に入りにくい国もあるだろう。しかし、危険覚悟、メンテナンスに自信がなければ、ガスを使うのは危険だと言っておきたい。私は40台程度の焼却炉を造り、運転しメンテナンスを徹底したつもりだが、バーナーで3件、トラブルを犯している。一件は、駐車場の近くにおいた焼却炉のバーナーのストレーナーが割れた。樹脂で出来ていたものが、石か空気銃の弾か判らなかったが、容器にクラックが入り灯油が噴き出した。炉の運転手が見つけた時には油が農業用水の川に流れ込み大変な騒動になった。
後の2件はパイプの配管の緩みと、メンテナンスの不備で灯油が流れ出し火事になった。焼却炉の稼働中はバーナーのモーターも常に回っている。バーナーはファンが止まれば、炉内の炎がバーナーの中に逆流する。炉の稼働中もバーナーファンのモーターは止められないから、常に振動が伝わり配管の結合部の緩みを促進する。灯油が漏れると目視で見つかるが、これがガスだったらどうだろう。検知器でチェックしなければ見つからない。
どなたにも理解できるだろうが、結論は目に見えている。すぐ傍に数100℃の熱源があり、そこに可燃性のガスが噴き出したら、間違いなく人身事故となる。焼却炉が出来た時、日本の消防署は油の配管に対しても厳重にチェックする。配管に石鹸水を塗って、配管内に高圧空気を送らされ、配管の裏側まで鏡を使ってチェックされる。これほど厳重にチェックする消防署が、どこの国にもあるのだろうか。
最近でもガスの事故は起こっている。ガス管を切断しようとして、火花が漏れていたガスに引火、三人のプロが衣服に燃え移り、重軽傷を負っている。ガスは漏れても判別出来るように、無色無臭のガスに匂いが付けてあるが、廃棄物の周辺ではその匂いは判別できないだろう。ガス漏れで人身事故が起これば必ずメーカーの責任になる。この覚悟をもって、バーナーの燃料にガスを使うことだ。私なら絶対に使わない。
(追記)焼却炉に使える灯油・重油の成分。
比重 着火℃ 発熱量 硫黄分 空気比 灯油 0.76~0.83 4~500℃ 9.8~11×10³ 0~0.30w% 1.25-1.35
A重油 0.85~0.915 530℃ 9.8~10.3×10³ 0.75w% 1.15~1.35
焼却炉のバーナーに使う油は硫黄分が多いB.C重油は許可されない。
53.ガス測定とダイオキシン測定。
ガス測定とダイオキシン測定は基づく法律が違う。ガス測定は「大気汚染防止法」に基づき、ダイオキシン測定は「ダイオキシン類対策特別措置法」に基づくもので、対象は廃棄物焼却炉だけではない。だから廃棄物だけではなく、有価物も含むし煙突から煙を出すものはすべてを対象となる。ただ廃棄物焼却炉の対象としては、ガス測定は「大気汚染防止法」の対象である200kg/H・炉床面積2平米以上となっている。
一方ダイオキシン測定は特に決まっていないので、50kg/H・炉床面積0.5平米以上とされるが、市条例で管轄されるため、市によって違うというのが正しい。市のホームページに書かれた小規模焼却炉をチェックされることをお勧めする。自治体によって違うので50㎏・0.5平米は鵜呑みにしない方がいい。
ガス測定は基本的に「煤塵濃度」「窒素酸化物」「塩素酸化物」「硫黄酸化物」「一酸化炭素濃度」の5項目を測定するものであり炉の規模によってそれぞれ数値が決まっており、それ以下を保持する必要がある。炉の運転する側としては、以下の事に注意されることだ。
1.「煤塵濃度」の場合バグの内圧をよくチェックしておく。バグの一部に穴が開いている危険性がある。
2.「窒素酸化物」炉の運転を1000℃以下におさえること。1100℃を超えると極端に高くなる。
3.木くずの専焼炉で塩素処理(消石灰噴霧/苛性ソーダ処理/水噴霧)のない炉では塩化ビニルを選別除去する。
4.「硫黄酸化物」はタイヤ、廃油に含まれる。
5.「一酸化炭素濃度」は不完全燃焼に注意。
ダイオキシン測定では「廃プラ」でも特に塩ビは取り除く。ダイオキシンは塩素(Cl)がなければ、炉が高温で低温でも出来ない。炉が高温であっても冷却が急冷(水噴霧)でなければ、塩素があれば出来る可能性がある。冷却と塩素に注意すること。
ダイオキシンの測定には費用が掛かるとういう理由で、小規模焼却炉(0.5平米・50kg未満)を設置されるケースが多い。しかし自治体によっては小規模焼却炉を禁止されているところもあり、煙を出して県から運転停止や、炉の改造を命じられる可能性がある。何よりもダイオキシンを出す炉は近隣のみならず、多くの人に迷惑をかけていることに痛みを感じて頂きたい。
54.二酸化炭素の効用
二酸化炭素を失くすことは出来ない。一酸化炭素が酸素と反応して二酸化炭素という安定した状態になる。二酸化炭素になれば人体にも危険性はないし液化天然ガスを運搬する場合、空間に酸素があれば危険だから、代わりに不活性な二酸化炭素が充填される。しかし、この二酸化炭素が地球温暖化の原因とされており、焼却炉はこの二酸化炭素を作り出すので肩身の狭い存在である。
この二酸化炭素は植物にとっては非常に有益なものらしい。日光と葉緑素と二酸化炭素で酸素が放出され、この二酸化炭素が植物の栄養素の働きをするようだ。ヨーロッパでは二酸化炭素が植物に吹き付けられ植物を元気にする、二酸化炭素を売る商売があると聞く。焼却炉から出る二酸化炭素が農業や果樹園などと連携して、有効に使う方法はないものだろうか。
二酸化炭素は土中に入れる方法があれば定着するとも聞く。焼却炉から出る二酸化炭素は、焼却炉が完全燃焼をすれば、相当豊富に造れる。常温に冷却するには大型のラジエーターのようにして自然冷却すればいい。そうすれば雪も霜も雨も颱風さえも冷却媒体として使える。地球温暖化では悪者扱いにされる二酸化炭素が有益に使われるようになれば、すこしは安心できる。
塩素は植物には大敵だから、燃料には間伐材のようなものが使われることが望ましいし、塩素や一酸化炭素の見張り番には焼却炉に使われる分析計(FUJI・DKK・SHIMADZU)がある。日本でも二酸化炭素が農業に使われるようにはならないものか、意欲ある人に考えて頂きたいものだ。