【焼却炉入門】☜ 1.バイナリー発電。2.圧力は水頭200米。3.アルマー加工。
1.バイナリー発電。
この㈱IHIの技術開発「ヒートリカバリー"HRシリーズ」は焼却炉にとっても、朗報でありありがたいことだ。70℃から90℃の熱湯があれば発電できるというのは、過去にはあまり知られなかった技術(オーガニックランキンサイクル)である。聞くところによると30ton/hの熱湯と冷却水があればいいということで、20kwの発電ができる。本来は工場の余剰排水(70℃以上)で発電が出来るという趣旨で開発されたものだが、焼却炉でもこんな熱湯なら余分な熱量で十分可能である。私の計算によると「木くず」で時間当たり500kgの処理量のものなら、二次燃焼の後にサイクロン集塵器をいれ、ある程度煤塵をとり(汚れ係数を小さくするために)、シェル&チューブの熱交換器を使ってガスを860℃から200℃に冷却(熱交換)すれば、時間30ton/h以上で85℃の熱湯が出来る。小型焼却炉(2平米未満、200kg未満)では30ton/hの熱湯を作るほどの熱量は出ない。焼却物に塩素系のガスが多ければ、熱交換器が1年くらいの消耗品になる恐れがあるため、塩素系の物は避けたほうがよい。そのためには間伐材とか、木くずの端材がいい。
2013年から販売開始ということだ。もう少し大きな容量(72kw)の物を望まれるなら、㈱神戸製鋼(KOBELCO)に問い合わせてみられたらいいだろう。楽しみな技術革新である。計算によると、1ton/hの木くずで80ton程度の湯量は確保できる。
2.圧力は水頭200米。
古いポンプにこんな文字(水頭200米)が見える。何を意味するものだろうと一瞬思う人も少なくないだろう。現在まで焼却炉をやってきてコンプレッサーやファン、ポンプを使い、その圧力の単位に悩まされてきた。
一般に大気の圧力は1気圧といい、それは水銀柱760㎜Hgと呼ばれたり、1013ミリバールと呼ばれたりしてきた。流量にあっても全ての基準になるノルマル立米(N㎥)は0℃、1気圧における流量を指す。特に気体(厳密に言えば液体も変わる)は異なる温度と圧力下においては大きく容積が変わる。その容積は絶対温度(-273℃)に比例するからである。
比重13.55の水銀は一気圧下で760mm押し上げられ、比重1.0の水は10332mm(10.332m)押し上げられる。水柱を10m押し上げる圧力を1kg/cm²とされているから、水頭200米とは20kg/cm²を意味することが判る。ちなみにHgは水銀の元素記号であり、Aqとは水の原義のaquaを意味する。
今までコンプレッサーの圧力はkg/c㎡で表され、ファンの静圧はmmAqで表されたものだから、どれくらいの差があるのか理解できなかった。簡単に考えれば5kg/cm²のコンプレッサーの圧力は水柱を50mもちあげ、ファンの300mmAqは水柱を0.3mしか持ちあげない。これだけ大きな差があるから、コンプレッサーの配管は50A以下でもよかったが、ファンの配管を50Aにすれば圧損でほとんど流れない。現在でもこんな勘違いがあり、ファンの配管が細すぎる焼却炉を多く見かける。念のためファンとブロワーは同じもの、機能的に空気を吹く(ブロウ)からブロワー、ファンは羽根(フアン)を回すからきた名前である。
現在は記号もパスカル(Pa)、キロパスカル(kPa)、メガパスカル(MPa)に統一されたので、この間違いは解消されただろう。ちなみに10kPaは1019.7mmAqであり、0.1097kg/cm²である。
3.アルマー加工。
アルマー加工はある条件、環境の中ではステンレスに負けない力を発揮する処理方法だ。私は産廃業者の雰囲気の中で、7年間ほとんど変化しなかった煙突を知っている。アルマー加工とはアルミの溶融槽に、鉄材をドブ浸けする加工で、おおよそ1.5m丸(3回くらい回して浸けるので線が入る)、長さ5mくらいは可能である。私は最大1250mm丸、長さ4mのものをアルマー工業の尼崎の工場に運び込んだことがある。
この加工を施すと、表面のアルマーと鉄材の接する面にはアルミ・アルミと鉄の合金(FeAl₃)・鉄の層が出来る。ダクトをアルマー加工して、管内を800℃以上のガスが通ると、表面のアルミは溶けて垂れ落ちるが、その分だけアルミと鉄の合金層が強くなると言う。
だから鉄材の表面には常にアルミと鉄の合金層が0.05mm~0.15mmの厚みで形成され、白く光りほとんど変化しない。この酸化アルミはアルミナ(ルビーと同質)とも言われ、熔融点は2050℃くらいあり、それがアルマー加工の耐熱の理由である。ダクトの様な円筒をアルマー加工する場合は内部を鉄筋で補強しておかないと、アルミの浴槽に浸けた段階で円筒に歪が出るから要注意である。
ドライの状態では酸にも強いが、水分が多い高温ガスの場合は腐食を起こしやすく使えない。加工費は材料の重量×単価であり、ダクトもSGP(炭素鋼鋼管)を使うより、4.5mmの鉄板をロール加工して使う方が割安となる。アルミのドブ浸けだから表面だけでなく、鋼管の内部も同様に塗れる。加工業者は関西では尼崎のアルマー工業、中部では東海アルマーがよく知られている。