9)耐火材と打ち方
5-2.バーナーとブロアー。
理論的にいえば発熱量はバーナーによってコントロール出来るし、空気量はブロアーによってコントロールする。発熱量は燃やす物質によって様々であり、発熱量の高い材料としては高分子材料(廃プラスチック等)があり、低い材料としては水分の多い生野菜や、有機汚泥などがある。発熱量の高い材料ならバーナーは使う必要はないが、低い材料ならバーナーで強制燃焼をする必要となる。
空気量においても木くずや紙くずのように、もともと酸素量が30%を超えるものもあるが、廃プラの中の人造ゴム、ポリプロピレンや廃油のように、酸素量が10%以下のものもある。これらは空気量を大量に給気してやらないと、不完全燃焼を起こし黒い煙となって煙突に出る。
6.炉の耐熱材料。
炉の構造材として、ダクト類の鉄材部分には、アルマー加工、炉の内部の耐火材として、キャスタブルが使用される。
6-1.アルマー加工。
耐熱酸化性が特長で、母材の表面に鉄-アルミの合金層(FeAl₃)が生成、その上にAl層、酸化アルミ(Al₂O₃)皮膜の順で形成される。Fe-Al合金層は.05~.15mmで800~1000℃加熱すると表面のAl層は漸時融解し、浸透して合金層に加わり、その厚みを増大すると共に表面にAl₂O₃が生成され(表面まで合金層に変化後も、たえず合金層より生成)これが合金層にある多孔性を密閉する。このAl₂O₃は溶融点2050℃の耐熱性を有し、この皮膜がたえず生成されて保護的に密着するので、勝れた耐熱性が発揮される。軟鋼にアルマー加工で500℃迄は変色無く1000℃迄スケールなし。870℃迄長期使用可。アルマー加工は海水(ガス温度200℃以下)にも勝れた腐食性を発揮する。
6-2.耐熱塗料。
耐熱塗料は現在1200℃までのものが発売されているが、焼却炉には800℃耐熱のもので十分と思われる。塗装方法は刷毛塗で下地の黒、緑、グレーと上塗りでは主にシルバーが使われる。鉄板加工した状態で下地塗料を刷毛塗りし、焼却炉を組み上げ、仮乾燥した段階で、耐火材中の水分が流れ落ちたあとをきれいに掃除し、そこに上塗りのシルバーを塗る。
このシルバーは刷毛塗りになるから専門の塗装屋さんに任すべきである。なお下地段階で荒く塗っておくと、シルバーを塗っても、下地塗装の跡が表面からはっきりと見えるので、商品である限り注意が必要である。
この塗料には薄め液もあるが、あまり薄めたり、吹付けをやれば耐熱塗料の能力が低下するので、原液で塗ることを勧める。ただし、この塗料は常温のものと比べると10倍くらいの価格になるから、塗布面積をよく検討しておくこと。
6-3.キャスタブルとプラスチック耐火材の比較。
1)キャスタブル耐火物(Castable refractoris)
硬化する成分はアルミナセメントであって、これにシャモット質、高アルミナ質、クロム質等の耐火物が混合されて骨材の役割をし、その目的に応じた耐火耐食性を示す。多孔質シャモット、珪藻土等を骨材に用いれば断熱材ともなり断熱キャスタブルと呼ばれる。
2)プラスチック耐火物(Plastic refractoris)
可塑性耐火物ともいい粘土の様に捏ねて成形する事が出来、乾燥すれば固化する。スタッドをつけた金属壁の上に叩き込む様にして耐火壁を作ったり、複雑な形の成形も出来る。そのままでも硬くなるが、乾燥後火を入れて表面に近い部分を焼結させるのが普通である。各種の耐火物粒子に耐火粘土と珪酸ナトリウム等の気硬性物質を加え、水で練って作る。このプラスチックは材質ではなく可塑性を意味する。
◎スポーリング。
耐火物の表面が剥がれ落ちる現象で、これには熱的(急熱急冷破壊)と機械的がある。熱的は熱応力による破壊で急熱急冷が行われると、表面に近い部分だけが膨張収縮し、他の部分が変化しない為、間に大きな応力が働き表面がサラ状に剥がれる事になる。これが繰り返されると更にスポーリングを起し易くなる。機械的は耐火材中の水分が膨張する水蒸気爆発や、クリンカ―の重機による破砕に伴って剥落する。鉄板やキャスターの膨張による、機械的応力が表面に集中して起す事もある。
◎耐火度
一定条件で加熱したとき同一又は、最も軟化変形状態を示した標準温度錐(コーン)の番号である。レンガ、キャスタブル等一般に多成分から構成される耐火物は一定の融点を示さず、温度上昇とともに徐々に軟化し、次第に溶融する。従って耐火物の耐火度をチェックするためには、あらかじめ一系列の溶倒温度をもつ標準体を用意しておき、それと試料の溶倒性を比較することにより耐火度を判定する方法がとられている。標準体としてわが国では、ゼーゲルコーンが用いられる。測定法の詳細はJIS R2204に定められている。このことによって解ることは耐火材も高温になると脆くなり、削れやすくなるという事である。
◎耐火材の打ち方。
●キャスタブルの角は脆いので30~50mmの面をカットする。
●耐火材の比重は1立米2.1tで計算する。これで運ぶ場合の部品の重量、焼却炉設置場所の地帯圧の総重量を計算する。容積は炉の鉄板の総面積に0.15mを掛けた容積に比重の2.1を掛ければよい。耐火材の必要量はこの容積に2%程度の予備を考えれば間違いない。使用で余れば水に濡れないようにして炉の補修のために保管する。
●一般的な焼却炉ではアサヒキャスターの13Sが使用される。この耐火材の最高使用温度は1450℃、化学成分はSiO₂(42w%)Al₂O₃(48w%)、施工所要量は1立米あたり2.05tonで計算すればよい。Cr分は入っていないので、焼却物と反応して六価クロムが出来る心配はない。
●焼却炉の排ガス処理の中で水を使う部分、サイクロンスクラバーや冷却塔などには耐水性のキャスターを使用する。アサヒキャスターではWPC-130がよい。この耐火材の最高使用温度は1450℃、化学成分はSiO₂(38w%)Al₂O₃(48w%)、施工所要量は1立米あたり2.05tonである。なお、このキャスターは耐酸性でもあり、腐食しやすい部分にも重宝である。
●キャスタブルの接合面は、組む前に必ず膨らみがないかを確認しておく。設計で耐火材の寸法の公差は+0で―の場合はフラットな幅広のヤーンでおぎなわなければならない。+になって寸法が当たった場合には、膨らんだ耐火材を削るのにサンダーでも長時間かかるから大変なのだ。
●耐火材は150mm厚にし、アンカーは10mmφ×(耐火材厚さ-20)mm、ステンレスのY型アンカーを使用する。150ピッチで千鳥、隣り合う二つは90度回転させてそろわないようにする。アンカーはポリエチレン被覆のものを使った方がテープを巻くより、手間が省ける。
●キャスタブルに精度の高い埋め物をする場合は、埋め物もキャスタブルのメーカーにさせる。二社にさせることは絶対に避ける。
●平面が広いものにキャスタブルを打つ場合(1.5平米以上)は、可燃性の仕切りを入れる。仕切りは炭化するベニヤ(3mm)が最適。
●耐火材を捏ねる水は成分の判らない天然水より、水道水を使う事。
●キャスタブルは水、蒸気の逃げ口を考えないと、水蒸気爆発を起す。フランジ部分のヤーンのパッキンから、水や水蒸気が抜けるようにする。
●キャスタブルのパッキンはヤーンを使用する。しかし、水を使用する場合はヤーンは水を通すので使用できない。たとえばサイクロンスクラバーなどは表面に、塩素を含んだ水が漏れると、表面の鉄板は腐蝕する。
●内側の型は木枠、薄い鉄板でも可能だが、鉄板の場合は蒸気抜きを考える事。
●広い平面のものには、H鋼などで定盤を作り、均等に受けて耐火材を打たないと、大きな反りが出来、変形して固化すれば元には絶対に戻らないので注意すること。
●コンクリートに比べて固化が早く高温が出る。そのため客先で補修させる場合は500kg~1ton程度の小型のコンクリートミキサーで捏ね、水は少なくし、手早く最後まで使い切るよう注意する。
●均一化するためには、バイブレーターを使いすぎないこと。耐火材に分離しやすい層が出来る。
10)に続く