6)発熱量の考え方
◎温度計。
焼却炉の各部につける温度計は、焼却炉を運転をする人の目安になり、自動運転の為に必要である。廃掃法に規定されるものには①燃焼温度と②冷却温度だけでいい。つける位置は燃焼温度室が二次燃焼の温度であり、誘引ファンの前後につける、すなわち冷却温度である。
多種類の燃焼材を燃やす炉では、完全に自動化することは出来ないが、部分的に自動化するためには、上記以外に③一次燃焼室の出口温度、バグフィルター集塵を使う時は、④冷却器の出口温度若しくはバグフィルターの入口温度を測定する必要がある。各温度計の役割は①廃掃法では燃焼温度を800℃以上にすることを規定、若しくはこの温度で2秒間滞留を規定された炉に必要である。この温度により、二次バーナーをコントロールしON-OFFを行う。だからこの温度計は二次燃焼室の出口、二次バーナーに影響されない位置に設置する。
②の排出ガス温度は、ダイオキシンの再合成を防ぐために、速やかに200℃以下に冷却する必要がある。排出ガスの温度が200℃以下になっているかを記録するための温度計であかる。この二つの温度計①②は、どんな焼却炉にもつける必要がある。
③は一次燃焼の温度を上げすぎないため、一次燃焼の空気量をコントロールする。また、炉全体のバーナーファン停止温度200℃はこの温度計で測る。
④バグフィルターは高温に弱いため、冷却温度が規定温度(180~220℃)を越えた場合、燃焼ガスをバイパスに流すダンパーを作動させる温度計である。
温度計にはK型(クロメル-アルメル=常温1000℃・最大1200℃)とR型(白金-白金ロジウム=常温1400℃・最大1600℃)の二種類がある。焼却炉の高温部①③はK型でよいが、温度計の被覆に注意する必要がある。セラミックとステンレスのものがあり、セラミック被覆のものはガスの流速、タール分の付着、小さな固形飛散物によって破損されやすく、出来る限りステンレス被覆を用いるべきである。冷却塔以後の温度計は350~500℃程度の温度計でよい。
温度計の感温部は先端部にあるので、必要に応じて長さを決める。二次燃焼室出口に近くなると層流になり、炉の上下で100℃程度の温度差が出来る。長さは二次燃焼の内径Φ×1/3+250mm程度が適当である。取付け部は25A(フランジ径95mmΦ 5㎏)で炉の外径から100mm高さのフランジを溶接する。
5.発熱量の考え方。
物が燃えると熱を発生するが、これを重量あたりのkcalで表したものを発熱量という。この発熱量には熱吸収を無視する高位発熱量と、水分や灰分による熱吸収(潜熱)を、計算に入れる低位発熱量とがある。
高位発熱量は実験によって求められた経験式であり、式によって多少の変動がある。焼却炉などで燃焼する物は、水分も灰分も含まれたものであり、燃焼物の実際のカロリー計算には、湿量基準低位発熱量(Hl)を用いる。燃焼ガス量(Aof combustion gas)において、湿り燃焼ガス量とは水蒸気を含んだガス全体、乾き燃焼ガス量とは、水蒸気を考えないガス量をいう。正確に発熱量を求めようとすれば、炭素(C)・水素(H)・酸素(O)・硫黄(S)・水分・灰分の重量比率(w%)が必要となるが、成分が分からない場合は、燃焼物の低位発熱量が分かれば、空気量・理論燃焼ガス量が計算(ロジンの式)出来る。
◎発熱量。
総発熱量(Gross calorific value)高位発熱量(Higher c.v.)とは同義語で、これから水蒸気の凝縮潜熱を差し引いたものを、真発熱量(Net c.v)低位発熱量(Lower c.v.)という。
5-1.発熱量の計算。
高位発熱量 Ho
Dulong式
Ho=8100(C)+34000{(H)-(O)/8}+2500(S) kcal/kg
Steuer式
Ho=8100「(C)-3/8(O)}+5700×3/8(O)
+34500{(H)-(O)/16}+2500(S)kcal/kg
Scheurer,Kestner式
Ho=8100{C-3/4(O)}+34250(H)+2250(S)kcal/kg
化学工学便覧
Ho=8100(C)+34200{(H)-(O)/2}+2220(S)kcal/kg
(C)・炭素。 (H)・水素 。(O)・・酸素。 (S)・硫黄 。(W)・水分。(A)・灰分。
(追記)発熱量の計算に必要な燃焼物の成分(C·H·O·N·Cl·W·A)のW%は[入門10 焼却炉の設計者]にある成分表を参考にして下さい。
湿量基準高位発熱量 Hg=Ho{1-W)-(A)}
湿量基準低位発熱量 Hl=Hg-600{9(H)+(W)} kcal/kg
理論空気量
Ao=8.89(C)+26.67(H)-3.33(O)+3.33(S)N立米/kg
理論湿りガス量
Gow=8.867(C)+32.3(H)+3.33(S)+0.8(N)-2.63(O)+1.244(W)
理論乾きガス量
God=8.867(C)+21.1(H)+3.33(S)+0.8(N)-2.63(O)
◎ロジンの式(Rosin fehling)。
燃料の発熱量と理論空気量と理論燃焼ガス量はほぼ比例し、発熱量が判れば、燃料の元素組成は不明でも、空気量(Ao)、燃焼ガス量(Go)は計算出来る。この関係を表すのがロジンの式で、廃棄物の組成不明の場合に用いられる。
Ao=a×Hl/1000+b Go=a×Hl/100+b
以上の計算式で理論空気量、理論燃焼ガス量が求められると、燃焼温度、実際の燃焼ガス量や、実際の供給空気量が求められて、焼却炉の各部の数値、使用機器の容量が求められることとなる。
燃料(Hl>=5000Kcal/kg) a=1.01 b=0.5 a=0.89 b=1.65
(Hl<=5000Kcal/kg) a=1.10 b=0 a=1.1 b=0.4
液体燃料 a=0.85 b=2.0 a=1.11 b=0
〇気体燃料は省略する。
7)に続く。