3)焼却炉の種類

 

3.焼却炉の種類。

 

    焼却炉は燃焼する物、及び燃焼方式によって分類される。焼却するが一般廃棄物のように水分が多く、発熱量が小さい物は乾燥ゾーン(ストーカー)ある炉を必要とする。産廃専用の炉は、一部の廃棄物を除いて、乾燥ゾーンを必要としない。ゆえに一般廃棄物の焼却炉のような、可動式のストーカーは用いず、燃焼物が流動性の物でない限りバッチ式が多く炉床もロストル(火格子)よりは流動床、もしくは固定床を用いるこが多い。

 

-1.焼却炉の構造。

 

①一般廃棄物焼却炉

 

   一般廃棄物は家庭ゴミですから、45%~52%くらいの水分を乾燥ながら燃やす構造になっている。その焼却炉は炉床が可動で、ゴミを投入口から後燃焼室に向かって移動する。その途中に炉内を流れる、高温の空気と炎で乾燥させ、最後は後燃焼室で燃やす構造になっている。これは自治体で作る焼却炉だから、50ton~200ton/日くらいのスケールで、大型炉専門の焼却炉業者(タクマ、クボタ、エバラ等)で造っている。

 

②産業廃棄物焼却炉

 

   低位発熱量が約2000kcal/kg以上の燃焼物、工場や建築現場で出る、木くずや廃プラ等を燃やす炉で、主に固定床、またはロストル構造になっている。処理量がton/時間を超えるものは自動投入、未満のものは二重扉構造で造られている。

   燃焼方式は、多段燃焼構造になっており、集塵機はスクラバーもしはバグフィルター方式になっている。スクラバー方式は冷却塔は不要だがバグフィルターを使用する場合は、能力の高い直接または間接冷却塔が必要となり、誘引ファンで引く強制通風が通例となっている。炉床面積2平米、処理量は200㎏/H以上、廃プラに関して言えば100kg/日を越えるものは、大型炉と同等のあつかいとなる。

 

③小型焼却炉

 

   小型焼却炉とは炉床面積2平米、処理量は200㎏/H未満のもので、構造的には燃え尽きるまで、投入扉を開かないガス乾留炉と、二重扉構造となった連続投入炉がある。年一回のダイオキシン測定が義務付けられている。

   この小型の焼却炉では廃プラは燃やせない。大防法の規定外であるためガス測定は免除されるが、県によっては条例がなく、一見放置されているように見えるが、煙を出すと住民の通報により、県は点検に来る。「改造するまで使用禁止」と言われるので、十分な注意が必要である。尚炉床面積0.5平米、処理量50kg/H未満焼却炉は自治体によって「原則禁止」となっているところもある。原則とは風水害によるゴミ、風俗習慣宗教上のゴミ、農業林業漁業営む上のゴミ、たき火やキャンプファイヤーで出る些細なごみである。

 

 

 

3-2.申請。

 

    14年対応(平成9年12月施行の法律)以前の法律では5ton/日以上と未満で法律上の基準値が変わっていた。現行の法律では大型、小型の違いを、火床面積2平米・処理量200㎏/H以上、未満で法律上の数値が変わる。県によっては小型焼却炉の条令があり、この基準が1.平米(150㎏/H)以上となっているところもあるので、申請前に確認する必要がある。

   尚、現在は炉床面積0.5㎡・処理量50kg/H未満の炉は申請不要とされているが、此れは県ではなく市が管理するもので、市のHPにはほとんどの市で「原則禁止」となっている。無許可、無申請の焼却炉は全国的に無くなったと考えていい。ガス測定(大防法)やダイオキシン測定(特措法)まで、全ての焼却炉に義務付けられる日が来るかもしれない。

 

 

3-3.医療系廃棄物(おむつ)の焼却。

 

   高齢化が進み介護の事業が増えることは明らだ。その場合長時間の保管が難しいおむつは、早急にそれこそ2、3日の間に焼却処理が求められることは、確実になってくる。しかし、使用済みおむつは水分が多く(64%)バーナーを使って強制燃焼しなければならない。

   8時間に50袋(ポリ袋一袋10㎏)、合計0.5tonを燃やすのに灯油250が必要となる。これはおむつの焼却を引き受ける場合の価格の目安にすること。計算は一番いい条件で行うから、炉の出来が悪いと効率が落ちる。普通は1020%ほど見込む必要がある。悪い焼却炉だと灯油400ℓ以上必要な場合もあるが、一方250以下で燃やせるという炉は現実的ではない。

 

 

 4.休業中の焼却炉(申請済みの炉も含めて)を復活。

 

 平成9年12月1日に施行された、一般的に14年対応と呼ばれる法律「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)」「ダイオキシン特別措置法(特措法)」について簡単に説明します。(詳細は「廃棄物六法⌋で確認してください)

 

 

《焼却炉本体》に関しては炉床面積、内容積、処理量及び煙突の位置を変えると軽微な変更にはならない。軽微な変更が出来ないと、環境アセスメントから行う必要があり、炉内のバーナーや供給空気に関しては熱灼減量を%(法律では10%)に出来るような構造にしなければならない。

 

《投入装置》に関しては処理量2000㎏/H未満の炉については2重扉構造、それ以上の炉に関してはプッシャー式、スクリュウ式、ロータリーフィーダー式、投入時に外部空気が入らず、炉内の火が見えない構造が必要なのだ。

 

《二次燃焼》以下の構造では燃焼ガスの滞留を800℃・2秒間を求められるので、構造を変える必要がある。

 

《冷却装置》については800℃以上の燃焼ガスを速やかに200℃以下に冷却するための構造を追加する必要がある。これには空気混入、直接水冷、シェルアンドチューブ方式があるが、特に集塵機にバグフィルターを使う場合はバグの耐熱温度に留意する必要がある。

 

《集塵装置》従来のサイクロン集塵機は認められず、高度な集塵機が求められる。法律上では「ろ過式集塵機(バグフィルター)」「スクラバー」「電気集塵機」となり、サイクロン集塵機ではばいじんのダイオキシン濃度の規制値(3ng/g以下)にすることは難しい。

 

《ガス吸引装置》従来の自然通風やエジェクター方式では絶対に無理で、強制通風の誘引ファンを使用する必要がある。大型炉の場合はガス測定器具として《CO 濃度計》の設置が義務づけられている。ただ燃焼ガスのダイオキシン濃度は処理量2000kg/H未満は5ng/N立米以下、2000kg/H以上4000kg/H未満は1ng/N立米以下、4000kg/H以上は0.1ng/N立米以下となる。

 

 

.法律による焼却炉の大きさ。

 

 焼却炉に大型、小型と呼ばれる区別はないが、法律上焼却に関して、廃掃法の法律施行令第七条にあり、産業廃棄物処理施設と呼ばれるもは、①汚泥の焼却では一日当たりの処理能力が5立米以上、又は大きさが、炉床面積2平米以上か処理量200kg/h以上のもの、②廃焼却では一日当たりの処理能力が1立米以上、又は炉の大きが、炉床面積2平米以上か処理量200kg/h以上のもの、③廃プラは一日当たりの処理能力が100kg以上、又は炉の大きさが、面積2平米以上か処理量200kg/h以上のもの、となっている。

 これよりも小さい焼却炉(炉床面積平米、処理量200kg未満)で炉床面積0.5平米以上、処理量50kg/H以上のものは『特定小型焼却炉』とされており、県や市の条例で縛られている。たとえば「京都市小型焼却炉に係るばいじん及びダイオキシン類排出抑制指導要綱⌋を参考にすると、「ばいじんの濃度及びダイオキシン類の濃度を測定し、その記録を3年間保存」という事が明確に記載されている。

   同指導要綱の維持管理に関する主な指導内容は、①プラスチック類は燃焼物として投入しないよう分別に努めること。②燃焼ガス温度を800℃以上に保つこと。③運転を開始する場合は助燃装置を作動させる。④燃焼ガスの温度を連続的に測定する。⑤ばいじんを焼却灰と分離して排出する、とされている。

 こんな条例や指導要綱がある自治体と、あるかないか判らない自治体もあるが、いづれは同じようになるから、現在小型焼却炉の条例がある自治体に合わせておくこと。

 

 

-6.燃焼プロセスによる分類。

 

①単段燃焼。

 

 一次燃焼過程のみで伝熱、空気供給により分解燃焼、表面燃焼を行い、揮発分、固定炭素、臭気成分、有害ガスなどを完全に燃焼させる燃焼法。揮発分が多く熱分解速度の速い物や、乾燥燃焼の過程で臭気、有害ガスの生成しやすい物は、一般的に単段燃焼では不完全燃焼を起す場合が多い。

 

②複数段燃焼。

 

 一次燃焼過程では、全空気量は供給せず(固定炭素の燃焼をまかなう程度、空気量全体の1/2~1/3)燃焼ガスの輻射、対流伝熱により焼却物の乾留を主体とし、二次燃焼過程において乾留ガス、臭気成分、有害ガスなどを完全燃焼させる燃焼法。発煙係数の高い物を焼却する場合は、この複数段燃焼による。

 

③バッチ燃焼式焼却施設。

 

 炉内へのゴミの送入を連続的に行う設備を備えない為、燃焼状態が歇になり易い炉形式で、一日8時間稼働を原則とする。火格子の一部、火床の撹拌、灰の搬出等を機械化したものを「機械化バッチ燃焼式」、れ以外を「固定火格子バッチ燃焼式」等と呼ぶ。

 

④床燃焼方式(Floor Combusion method)。

 

   廃プラの焼却処理として使用されている方式で、炉床に間歇的に廃棄物を投入して焼却するもの。熱可塑性プラスチック、廃油等を対象としている。床面はキャスタブルで作られ、空気は二次、三次に分配して供給する。廃棄物は加熱され、蒸発し、分解ガスは空気と混合して燃焼が行われる。主に二段燃焼によって、煤の発生を防止、空気の導入方法によって、黒煙の発生を防いでいる。炉床には溶融した物、油等の溜り部分を設ける必要がある。

 

⑤流動床方式。

 

   炉の底部より、1200mmAq3500mmAqの静圧を有する熱風、もしくは常温空気を炉内に吹き込み、噴気分散板上の流動媒体(珪砂、川砂)を、お湯が沸騰するように流動層状を形成し、媒体温度を700800℃に保ちながら、廃棄物を連続均一に投入して流動燃焼を行う方式。 

 

◎流動床方式の利点。

 

①液状物、多湿物、固形物等多種類の混焼が可能で炉体がコンパクト。

②燃焼効率が高く未燃物が少ない。(熱灼減量0.51.5)

③少量の過剰空気(m=1.25)で足りるため、ガス量が少ない。

④炉内に機械的可動部がないため故障が少ない。

⑤炉内の温度制御が容易で、脱臭限界温度に制御して、脱臭も可能。

⑥流動媒体に、石灰等を混入して脱硫、脱塩素も可能。

⑦蓄熱量が大きいため、再稼動の場合の燃料が少ない。

 

◎流動層方式の欠点。

 

①流動媒体の微粉塵も加わり、煤塵濃度が極端に多い(20~40g/N立

②燃焼物の大きさを50mm以下に破砕する必要が有る。

③媒体に珪砂を使用する場合、通常損耗分の補充を要する。

 

 

 

 

 4)に続く