33.医療廃棄物。34.焼却で出来る毒ガス。

33.医療廃棄物の話。 

 

   最近、医療廃棄物の話が日本のみならず、東南アジアや中国などからも聞く。漸く感染性廃棄物の処理の重要性などが理解されてきたようだ。医療廃棄物と言っても病院からでる廃棄物は、三種類ある。一つは病室や事務所、調理場等から出る廃棄物で、これは一般廃棄物である。次に「おむつ」など、医療系廃棄物で保健施設や介護の現場から出るものだ。三つ目は医療現場、総合病院等の各医局から出るもので、これは感染性廃棄物となり特別管理廃棄物として扱われる。
 

 一般廃棄物の炉はストーカー炉で、一日50ton200tonていど処理できる炉で、日本では自治体でこれを取り扱っている。手術で出てくる部材は、多分この焼却炉で処理すればいいが、日本ではこれを専門に引き取り、取り扱っている業者があるようだ。どのように扱われるかは、私の知るところではないし、焼却炉に関係ないのでここではこれ以上書かない。
 

 「おむつ」など、医療系廃棄物を燃やす焼却炉はあまり大きくない方がよい。水分が60%~70%くらいあるから燃料油を使って強制燃焼をしなければならない。しかもに詰め込むとパッキンのようになって落ちないし、バーナーの炎が当たる部分がトンネル状になり、中々思うようにならない物だ。効率の悪いでは、油の消費量が激しい割には燃え難い。こんなの場合はぜひとも相談頂きたい。
 

 最後は各医局から出るディスポーザブルが多く、チューブやバッグなど塩ビ系の部品が多い。柔らかくて透明になるプラスチックが、塩ビしかないのも問題だが、焼却炉は小型でも、塩素処理を施すことが一番の問題となる。どこの国に行っても、塩素ガスは毒ガスであるがゆえに、処理しないで放出することは絶対に許されない。それともう一つ、あまり大きな炉になると、一次燃焼室内の温度が最低800以上が保てない。そうなると、灰の中や燃え殻の中に、高温に耐える菌が残る可能性があり二次感染の恐れがある。国内でも問題であるが、ゴミの分別があまり期待できない国では、より慎重になる必要がある。

 

 

 

34.焼却で出来る毒ガス。 

 

 焼却炉は毒ガスを作るものだと考えたほうがいい。扱い方を少し間違えるだけで焼却炉毒ガス発生装置となる。焼却炉で出来る毒ガスは一酸化炭素 塩素ガス 亜硫酸ガス 主なものでもこれだけある。それ以外にも高温にさらされたカドミウム水銀の蒸気や、当然ダイオキシン毒ガスと言える。これは稀な例だろうが、バグフィルターが燃えた場合には弗化水素ガスが出る。これも体重50kgの人間が1000mgの吸引で死に至る、間違いなく猛毒である。
 

 ①不完全燃焼を起こす焼却炉は、煙突から不完全燃焼の薄黒い煙を出し続けており、これが一酸化炭素である。排ガスの誘引能力が弱く炉内がプラス圧になって、扉やバーナーの周辺から煙が出ている焼却炉。こんな焼却炉は全国には沢山あり、こんな焼却炉から出ているのが一酸化炭素である。一酸化炭素は発火点が609だから、空気(酸素)を十分与えて650以上の温度を保てば、間違いなく毒性のない二酸化炭素(炭酸ガス)に変わる。の隙間からガスが漏れている場合は、作業者にとっても有害であるから気を付けることだ。法律では30ppm/未満であるが、大気中濃度は1500ppmで死にいたることがあり、作業場の換気に十分注意する必要がある。
 

 ②塩素ガスは一番厄介者だ。最近はポリプロピレンなどに変わってきているが、塩素を含んだ燃焼物はまだまだ沢山ある。トユ廻縁波板レザー(合成皮革)、電線の被覆チューブパイプ塗料接着剤殺虫剤など、数えきれないほどの塩素化合物が世の中には溢れている。具体的に言えば医療廃棄物や車のシュレッダーダストであり、これらを燃やせば間違いなく塩素塩化水素が発生する。これを排気ガスから取り除く(塩素処理)のが大変で、このガスは熱交換器にも流せないし、他の機器でも金属を使っている限り腐食するしステンレスと言っても例外ではない。当然人間にとっても猛毒であり、大防法は700mg/であるが19000㎎/で半数致死、430ppm(1/百万)のガスを吸えば30分で死に至る。
 

 ③亜硫酸ガス二酸化硫黄のことで化学記号はSOである。燃焼物中に硫黄分(S)があれば、焼却炉内で発生することは容易に考えられる。これも猛毒と言っても過言ではない。燃焼物のどんなものに含まれているかと言えばゴムタイヤゴムの発砲体重油系の廃油である。ともかく合成ゴム(分類は廃プラスチック)に気を付けることだ。

 

 これらのガスに対する対策が施されていない焼却炉はもはや安全な焼却炉とは言えない。たとえ施されていても燃焼室の周辺から漏れていたり、煙突から出ているような場合は、緊急に対策されることをお勧めする。死に至らないまでも、肺炎、肺水腫、嘔吐、呼吸困難、意識障害等の重度な障害をおこすことがある。