1)焼却炉の専門家のための教材(序)焼却炉製作業者の心得

1.序章。

 

 まず、焼却炉を扱ってみたいと思う会社、焼却炉に興味のある方、焼却炉設計をやってみたい方全てに申し上げます。廃棄物は、最高温度が800℃~1300℃まで上がる商品ですから、使は常ににさらされ、常温中の材料とは根本的に違います。膨張率、比重、比熱は温度に比例して変わりますので、焼却炉を造る側も使う側も、この高温をいかに使いこなすか、ということに十分注意して下さい。しかも燃やす材料は多種多様の物があり、水分の多いもの、塩素分いもの、高温になると常温では考えられない有害ガス発生します。常温では無害の鉛や亜鉛、クロムやカドミウムなどの重金属類も猛毒になりますし、プラスチック類は気化(ガス化)し、ダイオキシン類の原因となるものもあります。だからその成分性能のみならず、高温おける性状も熟知しておくことが必要で、勉強することも初歩的な熱力学、流体力学、物理学、化学と多岐に渡りますので心してかかって下さい。

 

 

焼却炉製作業者の心得。

 

日本の「廃掃物の処理及び清掃に関する法律」(廃掃法)、「大気汚防止法」(大防法)、「ダイオキシン類対策特別措置法」(特措法)などに通らない焼却炉、日本に設置できない焼却炉、例えば一酸化炭素、塩素ガス、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)などの日本の基準に収らない焼却を途上国に持っていってはならない。SOxではやしてはならない物質を、NOxは高温で発生するものだから、NOxを出さない燃やし方をよく指導すること。

 人命に危害を与える炉、地球に危害を与える炉は、日本の優れた技術よって出来た焼却炉ではないと心得ること。それでなくとも物が燃えに出る二酸化炭素は、完全燃焼しても煙突から出るものだ。れが地球温暖化の原因になっていることをよく承知して下さい。

 

焼却炉は設計者、製造者、運転者が一つ間違えば「毒ガス製造機・凶器」になりうることを、よく承知して設計し、造り、運転すること。

 

外国(特に中国及び東南アジア)との炉の交渉にあっては、燃焼物(水分量)を限定するか、もしくは見なければ受けるのは危険。但し、日本で製作するとコストは合わないが、外国で加工する場合、日本と同様の溶接加工(特にステンレス)、製缶技術などの技術力があるかもよく検討が必要。 

 

●中国で造る方が加工費、人件費も安いと思われるが、台目は日本技術で製作しても、台目からの注文は無いと覚悟しておくべき。輸出された技術は真似られるか、盗まれても法律的にはどうすることも出来ない

 

●中国には産業廃棄物、一般廃棄物の区別はなく、サーズの流行以来医廃棄物だけはゴミ全般から区別された。食文化の盛んな国である中国のゴミは、日本のゴミより水分が10%多いので、60%(日本の一般棄物は平50%)と考えて、ロータリーキルン(乾燥)との直結等、焼方式を検討すこと。

 

●低温で燃やすもの、薫焼で燃やすもの、磁気を熱源とするもの等、燃装置と称する売り込みもあり、中国でも作られている。しかし日本の廃掃法によると、焼却炉の定義は800℃以上で燃やすことが規制されいる。この温度が確保出来なければ、日本では法規上で焼却炉と認めて貰えない法規上800℃とされているのは、一酸化炭素の発火点が609℃であり、ダイオキシンの100%分解温度が、約750℃あたりにあることからめられた数値である。

 

●炉床面積0.5平米未満の焼却炉は、一日400kgしか「焼却のマニフェト」が発行出来ない(燃やせない)ので、法規を遵守する限り業務用でられない。届け出の要らない炉は「費用が高いダイオキシン測定」避けるために、ユーザーが考えることで、必ず県と客先とのトラになる。そのトラブルにメーカーも巻き込まれることは必至で、望んでも避けることが利巧である。

 

●ユーザーとメーカー間の焼却条件は決め難いが、焼却炉運転者(国内)を遵守することを基準に、処理量/時間、温度(燃焼800℃以上・却200以下)、運転時間(通常は時間)を守ることを条件として決める

 

●使用している部品は出来る限り書面にして客先に説明する。メーー、ユーザー共にもめた時には「説明はした、と聞いていない」が対立するものである。説明した時は代表者のサインを貰って置く、らいの注意を払う

 

●消耗品(ノズル、温度計、一次燃焼室の耐火材、ロストル、サイクロン内筒、バーナー部品)は必ず書面にして残し、客先の責任者、若しくは代表者の了解を得る。

 

●炉の乾燥時点には、火持ちのいい材料(乾燥した大きな木材)2~か月分準備して貰う。同時に灯油が2~3か月間(二次バーナー能力×90日分)大量に必要であることを、会社の代表者、経理担者(小企業では奥さんが多い)に話し、それは全部客負担であること徹底する。乾燥時点の油の使用量は大量になり、必ずお客とメーカー間で「どちらが負担するか」というトラブルになる。焼却炉の性能には、炉全体を完全に乾燥をする必要がある。完全乾燥すれば燃料代は極端に減ること(1/10以下)を説明し納得してもらう。

 

●焼却炉の運転の際はテストであっても、炉に燃焼物を投入する作業使用者側に任せ、操作を教えながら運転者に1ヶ月~3ヶ月(連続でなくてもいいが本乾燥完了まで)は付き添う。その時必要な経費は客側の負担とする。炉に故障の原因になること、してはいけないことは代表者にも徹底する。いつの場合も社長がたいがいな無理を言い、無茶をするものである。

 

●野菜類は水分が90%以上ある。市場、ホテル、飲食関係の場合は燃を限定する必要がある。限定出来ない場合の焼却炉は、ロータリーキルン(乾燥)をストーカー炉に直結するしかないので高価になる。小型なら灯油を使って強制燃焼の必要があり燃料代が高くなる。却炉使用する灯油量とコンポスト、どちらが安いかを考えて、お客と相談すことが大切。間違えば両者の損失になり、決して焼却炉と無理強いしないこと。

 

●医療廃棄物に関しては廃棄物の全てが白い灰になるまで、平均的に800℃以上の熱がかかるように燃やす必要がある。菌類の中には数百度の高温に耐えるものがある。ロストルを使うと燃えない状態で煤塵の中に落ちることがあり、燃え残りや煤塵により絶対に二次感染を起こしてはならない。

 

●医療関係の炉には、病院の事務所のゴミを入れても(法律上はダメ)いいが、食堂の残飯手術の残渣(巻き込まれると内部が低温になる)等は絶対に入れてはならない。

 

●医療廃棄物は、選別も破砕も出来ないし、PVC(塩化ビニル)の使用割合(20W%)が多いため、水噴霧ではなく、必ず消石灰か苛性ソーダによる、塩素処理を施す必要ある。消石灰、苛性ソーダを使う場合、集塵機にはバグフィターを勧める事。

  

 

 2)に続く。