10)臭いと煤塵
◎耐火材の打ち方(続)
●乾燥焚きは一次燃焼室、二次燃焼室、耐火材を張ったダクト、冷却塔またはサイクロンまで一貫して行なう。
●一週間ほどで行う乾燥焚きは、耐火材の加工業者が行うもので、木っ端を燃やすことから始まり、炉の温度を一日かけて300℃まで上げる。300℃を2日間保ち、1日かけて600℃まで上げる。600℃を2日間保ち、ゆっくりと1000℃まで上げる。600℃になった段階で2次バーナーを使用してもいい。焼却炉の業者にとっては、これは仮乾燥焚きで、炉の水分を抜き、耐火材を硬化させる為のものである。
●仮乾燥焚きは24時間火を絶やすことなく、燃やし続けることが理想である。この時の燃料は材木屋の端材など、廃プラや加工材が混ざっていない、火持ちのいい良質の木くずが、炉の処理量の約20日分程度必要である。
●仮乾燥焚きでは炉中の水分、二次燃焼の水分、サイクロン集塵機の水分はある程度抜けるが、完全には抜けきってはいない。耐火材の水分は5%wとしても、耐火材を50ton打てば、2.5tonの水を抜くことが必要である。これからが本乾燥焚きで、炉中に出る水蒸気が抜けきるまで約2~3ヶ月かかる。この間は産廃業者で木くずと呼ばれるものが必要となり、煙を出さないために二次燃焼のバーナーは燃やし続ける必要がある。
●本乾燥焚きで発生した場合は、投入物、投入量を記録に残しておき、記録したことを客側に、何が原因だったかを知らせる(責任があれば運転者でもいい)。
●キャスタブルにはショックを与えない構造にする。耐火材に衝撃を与える可能性があれば、油圧もチェンブロックも閉じる場合は二速にする。
●燃焼中の焼却炉に振動を加えると、キャスタブルが割れたり、崩落したりする。
●耐火材が割れ落ちた場合は、炉の表の鉄板が赤く焼ける。その場合は表面部分に可燃性のものや、配線が近くにあると燃えるので注意。
●キャスタブルの補修は出来る限り客に任せ、材料購入の方法だけ教えてあげる。受ける場合は1ton(40袋)単位の購入とする。
●補修の目安は金属部分の露出。周辺50cm四方をブレーカーで破砕し、鉄板に適宜Y型アンカー15cm間隔に溶接し、型枠の板を当てて耐火材を押し込む。空気穴が必要な場合は、25φ×150のパイプを溶接する。
7.臭いについて。
産業廃棄物は一般廃棄物に比べて腐敗臭はなく、水分がすくないため高温で焼却されるので、臭いはほとんど出ないという特徴がある。但し不完全燃焼の状態では、物によって薬品臭や一酸化炭素とその化合物。塩素を含んだ燃焼物は塩化水素の臭いが残る。
7-1.脱臭法の種類
(除去率 大阪府庁がs48~50府下設置設備の実測調査)
①直接燃焼法(99~99.9%) ②触媒燃焼法(80~90%)
③吸着法(60~70%) ④ガス洗浄法
⑤オゾン酸化法 ⑥.静電補集法
7-2.直接燃焼法(直炎火熱法)の長所。
①燃焼効果を上げると他の脱臭法では得られぬ高除去率を期待できる。
②前処理を充分行えばすべての悪臭源に用いられる。但し塩素臭に関しては後段に塩素処理を考える。
③温度上昇による付帯効果としてガス拡散が大きくなる。
8.ばいじんについて。
燃焼物が燃えると、その灰分の一部が煤塵となって煙突から飛散する。この煤塵も燃焼物の質によって変動し、集塵装置を考える上で問題となる。
8-1.煤煙(すす)、媒塵生成とその防止
すす、媒塵の排出量は廃棄物の種類、炉構造、操炉条件等により相当差異が有る。不完全燃焼炉は、概して低温燃焼の場合が多く、すす、タール、CO等の未燃物の排出が増加、媒塵量、濃度も大きくなる。この様な炉で強制送風すれば、飛灰(フライアッシュ)の飛散排出が加わり、濃度が一層大きくなる。
完全燃焼する炉では、炉温が800℃以上あればタール系は殆ど出来ないが、燃焼効率に反比例して、焼却灰中に微細粒子の比率が増える傾向となり、強制通風の場合、又は自然通風でもドラフト過大で、空気流速が大きい時は、飛灰が排ガスと共に流出し易くなる。
◎フライアッシュ(Flyash 飛散灰)
焼却処理により生成した灰のうちの細かい物は気体に随伴して集塵装置に捕集される。この灰を飛灰(フライアッシュ)という。飛灰の粒子は高温に加熱され、球状に焼成されて、大きさは1~100μに分布している。
8-2.サイクロンの集塵効率計算書
集塵方法は大別すると4種類になる。水を噴霧するスクラバー、ガスに回転力を与えるサイクロン、塵に帯電させて極性をもって取り除く電気集塵、フィルターを通すバグフィルター方式。その中でも最も構造も簡単で良く使われているサイクロン集塵器の計算式を示す。
(1)設計条件
圧損係数 F=kA√D/(d₁²√(L+H)) 入口動圧 h=γt×u₁²/(2×g)
圧損 ΔP=F×h
k:定数(20~40) A:ガス入口断面積 g: 9.8
D:サイクロン内径 d₁:内筒直径m L:円筒部長さ
H:円錐部長さ γt:t℃の気体の比重量 u₁:サイクロン入口速度
√(A/D)>0.35のとき ut=1.4u₁
0.35>√(A/D)>0.2のとき ut=4√(A/D)
0.2>√(A/D)のとき ut=0.8u₁
2)サイクロンの集塵効率
一次分離効率 η1=1-(1-2πδ₂×ρs×u₁/(9μ×g×D×10¹²))²/(1-(d₁/D)²)
遷移界負効率 η₁'=(1-η₁)(1-((E-d₁)/E)²)
限界粒子径 δmax=√(18μg×10¹²/(π(ρs-ρf)ut))×√(u₁/ut×Ad/ED)
二次分離効率 η2 =(δ/δmax)²
媒塵濃度=(1-集塵効率)×媒塵量
11)に続く。