55.プラスチックの燃え方。56.オムツの焼却炉。57.動物の死体の焼却。

55.プラスチックの燃え方。

 

 焼却炉の中でのプラスチックはどうなるのかを考えてみたい。プラスチックには熱硬化性と熱溶融性のものがあり、プラスチックという言い方は熱溶融性のものを指す。熱硬化性のものは木くずや紙くずと同様に熱を加えると溶けることは無く、そのまま燃える。フェノール樹脂やメラミン樹脂、ユリア樹脂と呼ばれるもので燃焼の難易は、溶けないから扱いやすい。しかし、グラスウールで補強されたもの(FRP)もこの種類のプラスチックであるから、クリンカーに取り込まれる可能性もある。 

 

 しかしプラスチックの語源ともなっている熱溶融性のものは低温(200℃)でも燃えるが、低温でも溶けると液状になる事をよく考えておく必要がある。炉床には必ず液溜りを設けておく必要があり、無ければ灰出し扉の隙間から液状で流れ出る。始末の悪いのは流れ出してそこで燃える。私も多くの却炉で、炉の運転者が叩いて火を消している、そんな光景を何度かお目にかかった。

 液状になるとどんなに燃焼空気を送っても、溜りの表面からしか燃えず、燃焼に数時間を要するになる。だから廃プラだけを燃やすは絶対に避けるようにしている。木くずと50:50の比率にして混焼することにより、溶けた液が木くずに付着して表面積が大きくなる。廃プラだけで燃やすより早く燃やすことが出来、結果的には効率があがる。

 これは燃焼方法のことだが、プラスチックには一部を除いて、O(酸素分)はほとんど無いから、燃やすときはプラスチックと燃焼空気をどれだけ絡(から)ますことが出来るか、が一番大きな問題である。燃焼空気が不足していると、石油製品だけに黒煙が出るのは間違いない。ポリエチレンやポリプロピレンは黒煙となり、スチロールは油煙交じりの黒煙となる。二次バーナーがあり、空気が供給できる二次燃焼室でなければ、この黒煙は絶対に消すことは出来ない。

 

 よく廃プラがダイオキシンの原因にされているが、ダイオキシンは塩素がなければ絶対に出来ない。分子中に塩素を持っているプラスチックは塩化ビニルと塩化ビニリデン(通称サラン)である。それ以外のプラスチック、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチロール、アクリル、ポリカーボネート等はダイオキシンと全く関係がない。ただ、塩化ビニルは原料が安価だから多く使われる。例えばパイプ類、チューブ類、建築資材、医療部品関係、電線の被覆と多岐にわたる。

 一概に波板といっても塩化ビニルとポリカーボネートがあり、ポリカーボネートには塩素は全く含まれていない。見分ける方法は少し慣れが必要だが強度が全く違う。ポリプロピレンと塩化ビニルは慣れると手触りでもわかる。廃プラを燃やしてダイオキシンを失くそうとか、完全燃焼させようと思えば炉の構造とプラスチックを選ぶ目を養う必要がある。ヒントとしては、表面積を増やそうと思えば、炉床に耐火材で作った可動性のテトラポットのようなもの「疑似木材」をおくと、燃焼効率は上がる。

 

追記2 私が改造した焼却炉で一番廃プラがよく燃えたは、某県に造ったもので私の写真では(1999.3)にある、焼却炉の投入口から底までに長いキャスタブルの斜面を設けたものである。斜面の角度は55度程度で約10m、上の投入口から廃プラを投入すると底につくまでに斜面で溶けて燃える。但し、斜面の底には空気穴を設けず、側面と底にある。このは相当に燃えると思ったから、煙を消すための二次燃焼は大きな空間で十分な空気を入れた。推測だが申請の廃プラ専焼で処理量700kg/時間より以上はこなせたと思う。参考にしていただきたい。

 

追記1 先日春日部市のプラスチック工場の火事をテレビのニュースで見たが、焼却炉で廃プラを燃やしても、廃プラだけでは簡単に消えない。何度もなんども繰り返して火がついて、炉の中では夜中、朝方まで燃え続ける。しかも朝方には溶けたプラスチックが炉の中に糊状にへばりついて後始末も大変である。火事は焼却炉にとっては参考になるが、噴出するガスも人間にとっては結構な毒ガスで、けが人やガスを吸った人がいないか心配である。お見舞いを申し上げたい。

 

 

 

56.オムツの焼却炉。 

 

 ニュース等で聞くと子供のオムツより大人のオムツの需要が高くなったという事だ。子供のオムツ年齢は5歳くらいまでだが、大人のオムツ年齢は70歳から90歳までと考えると、それだけでも数倍はある。それにオムツは使い捨てになっても、リサイクルはまだ考えにくい。埋め立てに使ってもクッション性があるので、埋め立て処分にも不向きなようで、しかも、腐りにくい材質で出来ている。使用積みの物はあまり保管することも難しく、やはり焼却しかないようだ。しかし、このオムツの厄介な点は、水分が65%程度含んでおり、焼却でも強制燃焼しか方法はない。

 

 これからオムツの焼却炉を設計しなければならない後進たちのために、オムツの焼却炉の難しさを書いておく。参考にして頂ければありがたい。使用済みのオムツは水分が65%程度あるから、バーナーによる強制燃焼が必要となる。しかし、炉に投入されたオムツは自重により、パッキン状になり、バーナーであぶられた分のみ焼けて、バーナーの炎の部分だけ、トンネル状になる。だから、バーナーは一台を大きなものにしないで、小型のものを数台分散する方が良い。固定床ではなく、底からも熱せられるロストルにすることだ。

 

 焼却炉は円筒でも角筒でもよいが、上部の投入口から放りこむと、パッキン状に炉内に拡がり、炉内の燃焼ガスは上に上がらず、ガスはロストルより下へ抜く方が良い。オムツは水分が多いので、燃焼物の上には燃焼ガスではなく、悪臭の蒸気がたまる。そのためその蒸気が投入口から漏れる可能性があるので注意が必要である。上部のガス下の燃焼部分へ通し燃焼ガスに混入して二次燃焼に送るためには、炉の壁に凹部を何本か設けてガスを上から下に通す必要がある。上部の蒸気はそのまま二次燃焼に行っても、自然しないガスであることを承知しておくことだ。

 燃焼物を下に落とすためには、炉壁は3度程度の逆勾配にしておくことが肝要で、平行な壁では燃焼物は下に落ちない。私が経験したり失敗したことを後進たちが繰り返す事がないようにしてほしい。

 

 

 

57.動物の死体の焼却。

 

 鶏や豚の感染症、牛や馬の死体はどうされているのだろう。あまり知られていないが土葬が当たり前のようだ。感染した鶏や豚は感染が拡大しないために土に埋められているニュースは最近よく見かける。しかし、感染症の中には動物と人間の共通の感染症があることを御存じだろうか。代表的なものではO-157はニュースなどでよくお目にかかる感染症だ。これは動物から人間に感染した代表的なもので、アメリカあたりではハンバーガー病と呼ばれているらしい。

 土葬された感染動物の死体は、土壌汚染や河川の汚染に関係ないとはいえない。日本のように狭い国土で、洪水や土砂崩れ、土石流迄頻繁に起こる国で、安全に感染動物を埋葬できる土地があるのだろうか。放射性物質の場合は数百メートル、数千メートルの地下に埋める、それでも安全性を問題視されている。感染動物はせいぜい数メートル単位である。地下水にも流水にも影響はないのだろうか。北海道ではある地域の河川の水は飲むと危険という話を聞いた。原因は牛馬の埋葬である。人畜共通の感染症の弊害から逃れるために必要な処置は間違いなく火葬することである。

 

 動物を火葬する焼却炉は難しい。というのは動物には60%を超える水分と油脂分があり固定床のでは、水分と油分で肉を煮るような状態になり焼却には時間がかかる。8時間、10時間もかかる焼却炉があると聞くし、お目にかかったこともある。動物の焼却の場合はロストルにして、油分と水分をロストルから下に落とし、焼き肉を炭にするように焼くことが必要である。

 動物を焼くと臭いがあるため、この臭いは二次燃焼三次燃焼で焼いて消すことが必要と思われる。私は実際には造ったことは無いが、動物の感染症が起こった場合には絶対に必要なものと思われる。名前の通った競走馬なども死ねば土葬と聞く。これから必要な焼却炉ではないだろうか。

 

追記 長野から愛知と感染したトンコレラが大阪まで大きな被害に広がった。数千頭の豚が殺処分され、埋められてゆく姿が連日ニュースになって流された。土地が十分にある処はよいが、大阪などでは焼却処分をしなければ二次被害になる可能性もある。どのように伝染するかはわからないが、野生の猪からとも、大陸からの渡り鳥からとも聞く。専焼の炉がなければ大変な時間がかかるだろう。後進たちの専焼炉開発に期待したい。