72.廃棄物焼却炉の本体と常識。
72.廃棄物焼却炉の本体と常識 (〇は従来の物 ◎新規に追加)
質問を経験より短文に纏めたもの、理解出来ないときは再質問下さい。
焼却炉の燃焼理論。計算と設計。
◎焼却炉を扱う事とは酸化熱(+)と気化潜熱(-)をコントロールする事。
◎熱負荷=炉内の熱量(kcal/h)/炉の容積(m³) で、1m³中1時間の熱量。
◎熱負荷で炉の容積を決定、大型=4~15×10⁴kcal/h、小型=25×10⁴kcal/h
◎高位発熱量と低位発熱量は水分を計算に加えた発熱量でこれを用いる。
◎高位発熱量は経験式、これから湿量基準低位発熱量を求める(専門家6)。
◎経験式はDulong、Scheurer,Kestner、Steuer、化学工学便覧式がある。
◎焼却炉は処理量、焼却物、設置場所が決まれば計算し設計できる。
◎焼却炉の仕事を引き受ける時は焼却物の成分、水分量を知っておく。
◎計算書は焼却物を元素量(C・H・O・N・S・Cl)と水分、灰分にw%で分析。
◎紙、木、竹、廃プラ、斃獣、医廃、油、厨芥は探せば元素量の既成値がある。
◎焼却で幅が広く平均値が決め難い物、家庭ゴミ、医廃ゴミ、動植性残渣。
◎動植性残渣はコンビニ雑貨、インスタント麺類、バターチーズ、絞り粕、籾殻と多種。
◎植物性、動物性残渣は水分やロストルの有無で同じ炉では燃やせない。
◎廃掃法のゴム類は天然ゴムで、合成ゴム(タイヤ)はS分の多い廃プラ。
◎繊維類は天然の木綿、麻、絹、ウール以外アクリル、ポリエステル、ナイロンは廃プラ。
◎元素量を知ればClとSで危険物を、Oと水分量で燃え難さを判断する。
◎塩素分、硫黄分には灰中に残る残留分と燃焼ガスになる揮発分がある。
◎残留Cl、S揮発Cl、Sは焼却物が草木、紙、廃プラ、厨芥により比率が違う。
◎焼却炉の難敵は市場、食堂、コンビニ、漁場、畜産、薬業、修理工場のゴミ。
◎水分量が50%以上なら前段に乾燥キルンを+するか強制燃焼が必要。
〇木くずは35%の酸素を、廃プラは5%しか含まない。これが煙の原因。
◎焼却炉の形状は経験とセンス。能力・寸法は計算書で決定。(入門10)。
焼却炉の製作。
◎焼却炉は良き鉄工所と操作盤を作れる電気業者と、耐火材業者を確保。
◎計算書と図面がありSUS溶接、製缶が出来れば炉は鉄工所で造れる。
◎同じ焼却物を800℃で燃やす場合、炉の大小で壁の厚さは変えない。
◎炉壁は熱的破損より投入時の物理的破損が大きい、炉の形状で考える。
◎炉の周辺の隅々に可燃性ゴミが溜まり易い。清掃し易い構造にする。
〇耐熱塗料(800℃)は鉄工所で下地、仮乾燥炊き後に手塗りで仕上げる。
〇炉の固定はアンカー2本で、以外は乾燥焚き後にケミカルアンカーで固定。
〇角型の焼却炉はシンメトリに造らないと経年変化で捻じれる。
〇角型の炉は高い程、丸型の炉は回転すると炎が伸びて良く燃える。
〇ギロチン式のスライドは高温時に固着する。緩めるボルトが必要。
〇ギロチン式の扉はレールより、垂直から5度程度の傾斜面を用いる。
〇5m▢の扉、150mmの耐火材、中央800℃の輻射熱、対角で8㎝反る。
〇大型炉のキャスターの壁は、H綱で定盤を作り平面を保って乾燥する。
〇キャスターは寸法を厳守、組立て時のサンダー掛けが大変(入門51)。
◎耐火材の型枠に鉄板を使う場合は必ず高温蒸気の逃げ道を考える。
◎耐火材を練る水、配管の温水には成分不明の水より水道の水が最適。
◎炉表面の人が接触し易い処は内側に断熱材(シリカ・軽量)を入れる。
◎炉壁の厚み(mm)鉄板4.5、耐火材150、Y型アンカー130、断熱材50。
◎クラック(ひび割れ)は高温で開き低温で閉じ、均一なのが理想である。
◎耐火材のクラックは自然な現象で、表面の鉄材と膨張率の差で生ずる。
◎耐火材の規則的なクラックはアンカーの規則的な並びによって決まる。
◎耐火材のY型アンカーはSUSの10Φの棒材でポリエチレンを巻く(既製品)。
◎Y型アンカーの間隔は300㎜、千鳥と90°回転で隣りの二つを揃えない。
◎軽量の耐火材は物理的衝撃や摩耗に弱い。使う場合は適所を考える。
◎灰も個体も斜面50度以下では滑らない。空気噴霧か微振動で補助。
〇炉内の空気は25Φの穴を.50個~100個で流入するのが最適である。
〇燃焼の良否は供給空気の量と、空気吐出孔の配置で決まる(入門26)。
◎目詰まりだけ工夫すれば炉床から空気の入る炉は一番よく燃える。
◎優秀な炉の評価は容積、形、空気の流れ、焼却物の形等一概に言えない。
〇炉の壁から静圧500㎜で空気を供給の場合、壁間は2.2m以下とする。
〇廃プラや油脂製品を燃やす場合は、必ず炉床に液溜まりを設ける。
〇廃プラを100kg(286ℓ)/日以上燃やす炉は焼却施設である(入門40)。
〇焼却施設はCO 濃度計・二秒滞留・塩素処理・高度集塵が必要である。
焼却炉の維持管理と運転。
〇炉の運転者は運転、投入、炉の危険、メンテナンスの責任者である。
◎炉の運転者は殆ど説明書を読まない。概略運転説明を操作盤に貼る。
〇投入扉の開閉は重機上で運転者が行う。雑無線による誤作動に注意。
◎炉の扉の開閉は油圧もチェンブロックも二速を用い、片利きは避ける。
◎油圧油も夏冬で体積が変わり、微妙な使い方では誤作動が生じる。
◎大重量を繰り返し吊る時はワイヤーより重量保障のチェーンを使う。
〇炉の弱点(操作盤・濃度計・オイルタンク)に重機止めで運転者の負担を減ずる。
〇炉の操作位置から煙突の先端が見えない時は、見えるミラーを設ける。
◎燃焼室の温度が高いとクリンカーが増え、燃えない炉には出来ない。
◎一次温度は850℃以下で、二次温度は900~1050℃で燃やすのが最適。
◎クリンカーは釉薬と同じで、木質灰の溶けた物に不燃物が付着した物。
◎灰の主成分のケイ酸K・Caの溶融温度は約1170℃、クリンカーの参考になる。
〇空気穴周辺のクリンカーは、週一にハンマーで削らないと発達する。
〇熱灼減量の法律は10%未満~5%が普通、良く燃える炉は2%程度。
◎ゴミ中のアルミ(箔、サッシ)は700℃で溶け、炉内圧で空気穴に詰まる。
〇溶ける物(廃プラ等)を燃やす場合は、木くずに被せると効率が良い。
◎炉の大小には関係なく廃プラ専焼より混焼50%のほうが効率が良い。
〇焼却炉のロストルは必要な場合と不適当な場合がある(入門58)。
◎ロストルは鋳物が最適、鉄やSUS の管は水冷でないと簡単に曲がる。
◎医療廃棄物の焼却はロストルは不適当だが、オムツはないと燃えない。
〇700ℓの小型炉も廃プラ245kgを投入できるが、燃やせば投入者の犯罪。
◎焼却炉の稼働時間は最初の投入時から最後に投入する時間迄である。
二次燃焼・ブロアー(ファン)・バーナー・オイルタンク。
◎一次バーナーは炉壁から30cm下げないと投入木くずに打ち抜かれる。
◎操作に必要な一次、二次の空気のバルブは操作盤の近くに配置する。
〇燃焼温度の最高値が800℃を超えないと、焼却炉と認められない。
◎燃焼ガスの消臭は活性炭等の消臭剤より二次燃焼の直炎が効果的だ。
〇二次燃焼室は円筒で周囲から放射状に空気を入れるのが効率的。
〇二次燃焼室が円筒でファンの静圧500㎜以下では内径1.5mΦが限度。
〇四角い二次燃焼室は製造価格は安いが偏流、ショートパスの見本である。
〇予備加熱しない、又は出来ない炉は焼却始動時に煙が出る(入門48)。
◎予備加熱温度は特に指定はないが、COの発火点609℃以上が望ましい。
〇二次バーナーは予備加熱と乾燥炊きと保温の爲に必要(入門21/48)。
〇炉のバーナーは灯油が最善、A重油はS分が多くガスは危険(入門52)。
〇バーナー、空気供給、温度計のない二次燃焼室は正常な機能をしない。
◎焼却炉のバーナーは噴霧ポンプを止めてもファンは止まらぬ回路にする。
〇バーナーもブロアーも羽根に積もった埃が異音と故障の原因になる。
〇下向きに15度以上傾けなければ、バーナーの炎は上向きに流れる。
〇ガス温度を計らず、バーナーの炎の温度を測って誤魔化す愚かさ。
〇バーナータイルは40度以下の円錐にしないと、不完全燃焼になる。
〇温度センサーは層流の中央を計らなければ、∓50℃の誤差がでる。
◎センサーのセラミック被覆は塩素に強いが割れ易く、SUSとは適材適所。
◎センサーの被覆が割れると温度計の数値がチラつき、やがて切れる。
〇押し込みファンも逆止弁をつけないと、作動しないときに火が戻る。
〇押し込みファンはヘッダーで圧を整え、バタフライ弁で振り分ける。
〇ブロアーは低圧なので、配管径はブロアー口径より大きく(入門26)。
〇バルブには常時開・閉、スイッチには常時ON・OFFの札を下げる。
◎モーターや機器類の異音や故障に一番敏感なのが運転者である。
◎バーナーやファンのメンテは運転者が修理、掃除可能なものが多い。
◎灯油のタンクは1立米未満が少量危険物。以上のタンクは資格が必要。
◎水のレベルゲージはチューブでいいがオイルタンクは防爆用が必要。
〇油の量は防爆用のレベルゲージで事務所から見える方向に配置 。
◎焼却炉、オイルタンク、油配管は消防署に届け出て検査を受ける。
◎オイルタンクは炉からの距離と溶接、油配管は漏れをチェックされる。
◎オイルタンクは周囲にタンクと同じ容積のコンクリートの枡がが必要。
熱交換器・冷却塔・