77.誇れる日本人のごみ処理。 78.乱流、層流と温度測定。 79.楽な廃棄物焼却炉の申請。

77.誇れる日本人のごみ処理。

 

 私はこの30年間、日本ゴミ事情のみを見つめて生きてきた。最近になって世界の統計を見て驚いた。その統計をここに明かしたい。日本には世界の2/3の焼却炉があるという。焼却炉には処理量100tonを超えるものがあり、の数で一概には言えないが多いことは確かなようだ。多分小型炉は数えないから「大気汚染防止法」の基準となる200kg・2平米以上のものだろう。

 

  焼却処理場の数量(2008年)OECD(経済協力開発機構)の統計によると

 

1.日本 1893ヵ所 2.アメリカ 168ヵ所 3.フランス 100ヵ所 

4.イタリア 51ヵ所 5.ドイツ 51ヵ所 6.スイス 29ヵ所

7.オランダ 9ヵ所

 

 2008年の数字で少し古いが、2019年での日本焼却炉の数は大分減っているようで自治体のは1103基、民間の炉は306基、合計1409基となってい る。では日本は他の国に比較してゴミの量が多いのだろうか、という疑問がわいてくる。

 

  2019年のOECDの統計で、自治体が回収する家庭ごみ粗大ごみの 一人当たり/年間 の排出量のランキングを見ると

 

1.デンマーク 785kg 2.ノルウエー 744kg 3.アメリカ 744kg

4.ニュージーランド 740kg 5.スイス 707kg 6.アイスランド 661kg

7.イスラエル 653kg 8.ドイツ 637kg 9.ルクセンブルグ 620kg

10.アイルランド 585kg ーーーーーーー  33.日本 338kg

 

  追記。この数値は日本では一般廃棄物の数値になる。日本の十大都市の状況も書いておきたい。

 2018年に日本の環境省が発表した数値に365をかけて一人当たりのkg/年間の数値に計算した値である。参考にして頂きたい。

 1)川崎市 304kg/年   2)京都市 308kg/年  3)横浜市 309kg/年

 4)広島市 310kg/年   5)札幌市 321kg/年  6)さいたま市 322kg/年

 7)東京都 324kg/年   8)名古屋市 347kg/年 9)神戸市 354kg/年

 10)福岡市 367kg/年 11)大阪市 371kg/年

 

 世界各国の数値よりは大分少ないと思われる。一般廃棄物、産業廃棄物との合計、全てのごみも確認してみたい。 

 

 「24/7WallStreet]のアナリストが集計(2018年の9月に更新)農業、建設、産業廃棄物、一般廃棄物の一年間の合計を国の人口で割った数値である。

 

1.カナダ 36ton        2.ブルガリア 26.7ton  3.アメリカ 26.0ton

4.エストニア 23.5ton 5.フィンランド 16.6ton 6.アルメニア 16.3ton

7.スエーデン 16.2ton 8.ルクセンブルグ 11.8ton

9.ウクライナ 10.6ton 10.セルビア 8.9ton 

 

 このランキングには日本は入っていない。物作りが盛んで工業国の日本が5位以内に入っていてもおかしくないが、なぜ入っていないのだろう。私の手元の資料で、日本の2016年のものを計算してみる。一般廃棄物以外の廃棄物は、日本では産業廃棄物になっているから、

 

    2016年の一般廃棄物=43,17万トン 産業廃棄物=387,00万トン

  日本の人口=12,6932,772人として 

    (産廃+一廃)/日本の人口=3.39ton

 

 となった。これが何位かは判らないが、参考にはなるだろう。私が設計者の現役だった頃、物を作るとき一番大切にしたことは材料の歩留まりであり、無駄をなくし資源の少ない日本の原材料を大切に使う事だった。

 

 日本人のDNAにはアフリカのマータイ女史に云われた「MOTTAINAI(もったいない)」という心が潜んでおり、これがゴミを少なくする原因だと私は考えている。日本を訪れた観光客は必ず「日本は美しい」という。ゴミを出す量が世界でも有数に少なく、処理する設備が世界で一番多いなら、それも当然と言えるだろう。その一番の原因はゴミを出す一般人の心の中にも、処理する業者の心にも日本人のDNA が流れていると私は思っている。

 

サッカーやラグビーのスポーツでスタンドやロッカーを掃除して帰る日本の観客や選手の姿が世界のニュースになる。海岸河川敷ゴミを掃除する人や子供たちこれも日本人のDNA だと胸が熱くなる。一方、集団の若者たちが町中や海浜等でゴミを放置したり、相変わらず減らない不法投棄のニュースに接する。誇りを捨てた日本人の姿に胸を痛めている私は古い人間なのだろうか。

 

 日本を世界に誇れる美しい国に保っている廃棄物業者の方は胸を張って頂きたい。同時に優秀な焼却炉や処理技術を世界に、特にアジアの国々に広めて頂きたいと切に願う次第である。

 

 

78.乱流、層流と温度測定。

 

 私の手持ちの資料で乱流は「流体の速度や圧力などが不規則に変動する流れをいう」とあり、層流とは「流れの中で、流体の各部分が互いに混ざり合うことなく流れるものをいう」と定義している。焼却炉の中では流体は冷却水燃焼用の油油圧の油、燃焼空気、排気ガスくらいで排気ガス以外は乱流、層流はほとんど影響がない。

 

 排気ガスはダクトの曲り部分、サイクロンやバグフィルターの中では乱流となり、ダクトがストレートの場合は層流となる。乱流は2mほど流れると層流になるということだ。この場合層流で注意しなければならないのは、ガスの高温の部分は上部を流れ、低温の部分は下部を流れる。ダクトの径にもよるが1000mmΦ程度の水平ダクトでは上下の温度差は50~100℃になるから、温度の微妙なバグフィルターの入り口温度などは注意すべきである。

 

 私の失敗例を上げてみる。焼却炉の運転者から連絡があり「バグフィルターの入口温度より出口温度が高くなっている」と言っている。そんな馬鹿な、と私は運転者の勘違いか、操作盤内の配線の誤りを疑った。バグフィルター内に熱源がない限りそれは絶対にありえない。考えてもどうしても理解できなかった。操作盤を設計した電気屋さんも回路的には問題ないという。最後は手持ちの温度計を差し込んで確認してみると、水平ダクトの上部と下部で50℃ほどの温度差があることが判明した。入り口の温度センサーが深く入りすぎていて、低い温度を測定している。それがバグフィルター内でかき混ぜられ、温度が高くなったのだ。

 

 結果が判り笑い話になったが、こんなことを考えてもいなかった。乱流、層流をダクトの長さ、流速、密度の積と粘性率との比で数値化したのはイギリスの工学者レイノルズである。彼のレイノルズ数まで深く考える必要はないが、温度が微妙に影響を与えるバグフィルターの入口温度などは、私の失敗を参考にしていただきたい。

 

追記 以上の経験から水平のダクトの温度を測る場合、平均温度が必要な場合はダクトの中心部、最高温度が必要な場合はダクト内部の上部に温度センサーの感温部が来るようにセットする必要がある。特にバグフィルターの入口温度の場合は、最高温度を測定されるようお勧めする。

 

 

79.楽な廃棄物焼却炉の申請。

 

 私は焼却炉の設計や製作指導、運転指導を業務としてきたので、北海道から鹿児島までの県や保健所へ、焼却炉の説明に回ったり申請手続きをやってきた。住民説明会で住民を納得させるのは当然私の業務であるから、これは仕方ないことであるが、県への申請手続きは焼却炉製作業者の仕事ではないと気付いたのは、この仕事を始めてから大分時間が経ってからである。

 本当は資格のないものが手数料をとって申請手続きをやることは法律(行政書士法)違反であると知った。多分、今も知らないでやっている人のために、少し説明しておきたい。

 

 焼却炉は全国で要望があるから、焼却炉業者が現地に行くことは当然であるが、申請は各県の保健所や廃棄物指導・環境課に何度も足を運ばねばならない。これは業者にとって大変な仕事であり、時間の無駄でもある。しかも慣れない担当者との話し合いは結構な重労働である。

 これを解決してくれるのが「行政書士」という仕事である。行政書士は各県にいて、こちらで図面と計算書を用意すれば、一切の書類の作成や役所との交渉をやってくれる。設計者や業者からの説明が必要な時は県の担当者を紹介し、面談のスケジュールも調整してくれるからこんなに有難いことはない。

 

 行政書士は必ずホームページをもっており、専門分野(廃棄物焼却炉)や経歴、実績も判るから探して、お会いしてどこの県の何課と馴染みがあるかを確認すれば、まず間違いはない。彼(彼女)らは車で移動できる範囲(近県)は動いてくれるから、私は申請手続きから開放されてどれだけ楽になったか知れない。申請手続きは間違いなく行政書士がお勧めである。

 追記しておくが、焼却炉の設置において申請を行うのは、を注文された施主であるから、行政書士を雇って頂くのは焼却炉施主であることをお間違いないようにして下さい。施主にとっても焼却物の品目追加、焼却時間焼却規模の変更とかに書類作成が容易に依頼出来て、重宝がられることは間違いない。焼却事業者(施主)として続けていく限り、電話一本で頼める行政書士の存在は必要不可欠と言える。賢い焼却事業者には優秀な行政書士がついていると言っても過言ではない。