13)焼却灰とクリンカー
◎煙突の問題点。
●煙突は建築基準法施行令第138条により、独立して立つ物の内6mを越えるものには、一級建築士による耐風力、耐震力の強度計算書を提出しなければならない。
●煙突の架台としては、小型焼却炉で高さが6m以下のものに関しては、三方向にワイヤーで固定する。
●高さ6m以上の煙突は、50×50~90×90の等辺山形鋼で、形体は四辺形で高さは煙突の2/3程度にする。(写真1992.5 1994.1参考)
●水を使う煙突から水蒸気を無くす事は絶対に出来ない。アフターバーナーでも煙突と蒸気の間に、空間(透明な部分)が少し増すだけである。蒸気を失くそうと思えば、蒸気を水に戻すことだが、熱交換器が高くつき、汚れた水の処理に困る。
●水を使う焼却炉の煙突の周辺10m以内に駐車場は避ける。敷地の隅
に煙突を建てる場合も隣地に注意、風向きによっては煤塵が飛ぶ可能性
がある。煙突からの飛散物が,約10mの範囲に散らばるからだ。
●バグフィルターを使用していても飛散物はある。煙突がSUSでも、煙
突内壁に溜まる飛散物が、誘引ファンの切り替えによる、風の強弱によ
り飛ぶので、煙突の材質や集塵機の有無は関係ない。場合によってはラ
インクロン(軸流サイクロン)を使う必要がある。
●新しい大気汚染防止法では、自然通風、エジェクターは通用しない。
焼却炉内を負圧にするためには誘引ファンを使う。
●材質はステンレスSAS306か、鉄板+アルマー加工で4.5~6mm程度
のものをつかう。
11.焼却灰とクリンカー。
焼却の際に生ずるものに、焼却灰とばいじんとクリンカーがある。集
塵機によってとらえられるばいじん、及び焼却炉より生ずる灰(クリン
カーを含む)は管理型最終処分場に、委託しなければならない。
◎クリンカー生成を助長する原因
①固体廃棄物を火格子炉で焼却する場合、層の厚だきが最も一般的
で、火層の内部温度が高く、還元層が厚くなり灰が還元気中で高温に熱
せられる。
②火層を極端に混ぜると、高温燃焼部に灰が接触し、クリンカー生成
を促す。
③火層の薄厚のムラが多い場合も生成しやすい。ムラがあると空気は
抵抗の少ない部分を通り易く、局部加熱のため灰が溶け、厚い部分は還
元気が出来やすい。
◎クリンカー生成防止の注意事項
①火層を極力平均化し、厚だきを避ける。
②火層はあまり頻繁に撹拌しない。
③クリンカーを生じ易い不燃物〔土砂、ガラス、石灰、粘土、貝殻、
卵がら、セメントモルタル〕を避ける。
12.付帯設備。
12-1.発電機。(バイナリー発電)
加熱源(ここでは70℃~90℃の熱湯)により沸点の低い媒体(作動媒体)を蒸発器(熱交換器)で加熱、蒸発させてその蒸気でタービンを回し発電する方式である。加熱源と作動媒体の二つの熱サイクルを使って発電することから、バイナリー(二つの要素からなる)発電サイクルと呼ばれる。低沸点の作動媒体を使うことで、工場廃液や温泉などの熱エネルギーを放置することなく電気エネルギーに変換出来、低エネルギーの回収が可能になる。
使い終わった媒体は凝縮器(熱交換器)で冷却水と熱交換して、また蒸発器に戻される。そのため外部とは接触することがなく、熱交換するだけの密閉空間となるため、外部に公害的な影響を与えることがない。作動媒体としては普通のタービンの場合は水を使うが、マイクロバイナリーの場合は有機媒体にオゾン破壊係数0のフッ素系、不燃性不活性ガスが使用される。
◎熱交換器の注意。
●ガスに塩素分の多い時は、シェル&チューブの熱交換器は絶対に使うべきではない。出来る限り間伐材か、塩ビを選別した木くず、廃材にした方がよい。
●シェル&チューブの間接冷却型の熱交換器では、掃除のしやすいパイプ内に汚れの多い媒体を通すのが常識であり、焼却炉のガスは冷却水より汚れが多い。
●間接冷却の(煙管式)熱交換器では、水は軟水を使うようにする。天然水を使う場合は軟水か硬水かを確認し、硬水ならば工業用水、水道用水を使用する。
●チューブ内は金属棒にスポンジや布を巻いたもの、若しくは高圧空気で掃除が出来る構造にする。竪型にするときは、上に上がって掃除がやりやすいようにしておくこと。
●煙管式の冷却塔は水側にも、パイプの外側の掃除の為に、大きなマンホールを開けておく必要がある。
●鉄とステンレスでは約3倍、鉄の方の熱伝導率が高い。300℃の状態で銅と比べると381(銅):56(鉄):19(ステンレス)となる。
◎IHIのバイナリー発電。
㈱IHIの技術開発「ヒートリカバリー”HRシリーズ”」は90℃の熱湯があれば発電できるというのは、過去にはあまり知られなかった技術(オーガニックランキンサイル)である。30ton/hの熱湯と冷却水があれば、20kwの発電ができる。工場の余剰排水(70℃以上)で発電が出来るということで開発されたが、焼却炉でもこんな熱湯なら余分な熱量で十分可能である。
計算だと「木くず」で時間当たり500kgの処理量のものなら、二次燃焼の後にサイクロン集塵器をいれ、煤塵をと(汚れ係数を小さくするために)、煙管の熱交換器を使ってガスを860℃から200℃に冷却(熱交換)すれば、時間30ton以上で85℃の熱湯が出来る。小型焼却炉(2㎡未満、200kg未満)では30ton/hの熱湯を作るほどの熱量は出ない。焼却物に塩素系のガスが多ければ、熱交換器が1年くらいの消耗品になるため、木くずは間伐材などがよい。
14)に続く。