74.ガス量の計算方法。75.燃焼温度の計算。76.焼却炉の資料
74.ガス量の計算方法。
私の盲点であったようだが最近「ガス量の計算方法⌋をとの問い合わせが多い。計算書の既製品を見られた方は理解されると思うが初めての方は少し難しいと思うので、私も思い起こしながら書いてみます。理解が難しいところもあるでしょうが、参考にして頂けたらありがたいと思います。
最初に燃料の成分表を探すのが一番で、最近は多くのホームページに「参考になる表」が出ているから探して頂きたい。(入門43に簡単な表を追加しました。参考にしてください)
ここに取り上げる数値は「東京都部の一般廃棄物昭和60年データー(東京都研究所資料)」で私が最初の頃使用した古い物だがご容赦頂きたい。
C=24.63% H=3.55% O=18.40% N=0.73% S(揮発分)=0.02%
S(残留分)=0.02% Cl(揮発分)=0.28% Cl(残留分)=0.10%
水分(W)=45.27% 灰分(A)=7.00%
より可燃分組成を計算する。
C=51.73% H=7.46% O=38.65% N=1.53% S=0.04% Cl=0.59%
助燃料の可燃分組成も示しておくと
C=85.7% H=14.1% S=0.004% W=0.004% A=0.192%
(発熱量は省略する)
理論空気量(Ao=)8.89×C+26.7×H-3.33×O+3.33×S=(N㎥/kg)
理論湿りガス量(Go)=
8.867×C+32.3×H+3.33×S+0.8×N-2.63×O+1.224×W=(N㎥/kg)
理論乾きガス量(Gd)=
8.867×C+21.13×H+3.33×S+0.8×N-2.63×O=(N㎥/kg)
空気比(空気過剰係数)=mを決める。m=1.2~3
(空気量の必要な廃プラは大きくする)
理論空気量に(m-1)を掛けると実際空気量となる。これをN㎥/minとしてブロアーを決める。
理論湿りガス量に実際空気量を加えると実際湿りガス量になる。
実際湿りガス量(Gw)=Go+(m-1)×Ao=(N㎥/kg)
バーナーのガス量、必要空気量も灯油の成分を同様に燃焼計算して、ガス量に+して最大排ガス量(G)とする。
冷却水を使用する場合は
水量(W)=G×(900×0.3899-180×0.33)/((595+0.999×20)×0.97)=(kg/H)
(900℃のガス温度を180℃に降下する。0.3899,0.33はガスの比熱、0.999は水の比熱、595は水の蒸発潜熱。0.97は効率である)
水1molは18ミリリットルであり、気体になると22.4リットルであるからmℓ/Hの水は22.4/18を掛けて蒸気量はN㎥/Hとなり、これをガス量に追加する。以上が集塵機、誘引ファンや煙突にかかる総ガス量である。
75.燃焼温度の計算。
「燃焼温度はどのように計算していますか」という質問を頂いた。私も燃焼温度の計算は最後まで悩んだが、一次バーナーや二次バーナーの油量を計算したり、冷却空気、冷却水量の計算にどうしても必要なので、「廃棄物焼却炉-計画と設計(環境整備研究会)」の資料より次の公式を使わしてもらっている。カロリーから温度の計算だから、経験値かもしれないし、多少の誤差はやむ得ないと思っている。
排ガス温度 t0=(Ec×Hl+m×Ao×Cp×dt-a×Hl)/(Gw×Cpm)=(℃)
Ec=燃焼効率0.85 Hⅼ=低位発熱量(kcal/kg) m=(空気比)空気過剰係数
Ao=理論空気量 Cp=空気比熱(20℃)0.3104 dt=空気温度20℃
a=炉壁伝熱係数0.1 燃焼効率Ec=0.85 Gw=湿り燃焼ガス量
Cpm=ガス平均比熱(0~t0) (余分な文字があり、訂正しました)
同じ空気量でも焼却炉壁の流入位置が変わると、燃焼温度は大きく変わる。炉の側面から空気を入れていると炉内温度はそれほど大きく変わらないが、廃プラの専焼炉で炉床から空気を入れると温度は急激に1200℃位まで上昇するのを目撃した。そのブロアーは炉の出口の温度計で温度コントロールしないと炉の痛みが激しくなる。
同様にこの計算式では燃焼物が廃プラで、空気過剰係数mを大きくすると燃焼温度t0がすぐ1200℃を越える。それが正確かどうかはわからないが私は空気過剰係数mで加減していた。実際の炉では側面から空気を25Φの穴を50~100カ所で供給していたので、穴がクリンカーでふさがれない限り炉は800℃~1000℃の範囲で燃やされていた。
現物に即した温度をどのように計算するかは新しい公式が考え出されるかもしれないが、従来の計算方式を遺すために記録しておきたい。
76.焼却炉の参考資料。
私が焼却炉の仕事を始めた時に「どんな資料を参考にしたのか」という質問をいただいた。私が仕事を始めた時は私の前任者が2冊の資料を持っていてくれた。それ以後私は本屋や梅田、京都の古本屋で関係書類を探して歩いた。そして30年の間に計算書のために必要な資料を十冊あまり手に入れた。現在、実務を辞めたので一切の資料を必要としている方に差し上げた。代表的な書籍を書きとどめておきたい。
1.「ごみ処理施設構造指針解説」
全国都市清掃会議・厚生省水道環境部監修
2.「廃棄物焼却炉ー計画と設計」環境整備研究所
3.「廃棄物の焼却技術」志垣政信・編著
4.「医療廃棄物」田中清・高月紘・編著
5.「伝熱工学資料」日本機械学会
6.「廃棄物処理におけるダイオキシン類削除対策の手引き」
平岡正勝・岡島重信・編著
7.「活性炭読本」柳井弘・編著 石崎信雄・著
8.「公害防止の技術と法規」
編纂委員会編 監修・通商産業省環境立地局
9.「機械設計図表便覧」小栗富士夫・小栗達男共著
10.「腐食防食の実務知識」松島巌・著
11.「改訂・廃棄物のやさしい化学」村田徳治・著
12.「廃棄物小事典」社団法人・日本エネルギー学会・編集委員会
13.「産業・都市・放射性廃棄物処理技術」福本勤・著
これ以外に「廃棄物六法」とか「理科年表」「化学辞典」とかを参考書にしていた。中にはすでに廃版になっているものもあるし、廃棄物焼却炉の資料がそれほど多くないのも事実である。