11)集塵機と冷却水

.サイクロン以外の集塵機

 

(1バグフィルター

 

   円筒あるいは封筒状の炉布の内面あるいは外表面でダストを分離捕する装置である。一般に対象となるダストの濃度は高いので、粒子「ふるい」効果によりダスト層に捕集される。冷却機能が無いため事前に大型の冷却装置を設置したり、塩素を除去するために消石灰噴霧装置を必要とする。

 

 

電気集塵機

 

 高電圧のコロナ雰囲気の中で煤塵を負の電極にして、その煤塵を正電極の中で取り去る。一定間隔で正の電極をハンマーで叩き、溜まったばいじんをふるい落とす構造である。0.025ミクロンの煤塵を99%以上捕集する精度の高い集塵方式であるが、最適温度がダイオキシンを生成する温度と合致するため、集塵機中でダイオキシンを生成すると言う論文もあり、湿式電気集塵機等も考えられている。機能満足するには事前に冷却装置を設置したり、粗い煤塵を除去するためにサイクロン集塵機を設ける必要がある。

 

 

スクラバー

 

 高圧水を噴霧したり、水の中をくぐらせることにより煤塵と親水性塩素を除去したり、ガスの温度を冷却したりすることを目的とした集塵機である。バグフィルターや電気集塵機に比べると性能は落ちるが、一応廃掃法の基準に許可されている集塵機である。他の二つと違うところは冷却塔と集塵機が一体に出来る所にある。

 種類は・スプレー塔・充填塔・サイクロンスクラバー・ジェットスクラバー・ベンチュリースクラバーとそれぞれあるが、ガス流量、圧損、水量、水圧に応じて考えればよい。

 

 

◎バグフィルターの扱い方。

 

●灰受けの箱、袋などは顧客と打ち合わせる。灰の受け入れ先に注文あるから。

 

●粉塵の発火、粉塵爆発、バグと粉塵の引火にたいする知識を学ぶ。

 

●バグフィルターの灰は鉄分の混入比率により、時間が経ってからもえる場合があるので注意。

 

●フィルターにはテフロンが使われており、もし燃えた場合は弗化エレンと言う毒ガスが出ることになる。すべての点で火には十分に注意。

 

●ロータリーバルブは灰を咬むと異常音が発生する。メーカーに確認ておく。

 

●ガスに水分が多いと目詰まりの可能性が強まる。冷却水を噴霧する合は、中間に水を減らすためのウオーターサイクロンを考える。

 

●目詰まりが起こった場合パルスの間隔を短くする、圧力を上げる等の確認。時々空打ちなどして圧損を減らす方法もある。

 

●水冷が停電などで止まる場合を考えて、自動的にOFF開の状態でバパスを設ける。但し、県に了解を得なければ、常にバイパスを使れると警戒される。停電の場合、又は冷却温度が限界を越えた場合のみく、などの工夫が必要。

 

●バグフィルターの入口、出口を結ぶバイパスを必ず付ける事。乾燥き段階と運転中には停電などで冷却が出来なくなった場合のためである。尚このバイパスには空気冷却で、ガス温度を300℃以下に落とす空気吸い込み口をつけておく。誘引ファンの耐熱のためである。

 

●バイパスダンパーは回転式はダメ。必ずギロチン式にする。回転式誘引ファンで引かれると動きにくくなる。ダンパーをバイパスに切り替えるときは、誘引ファンをインバーターで落として切り替える。 

 

 

◎冷却水の使い方。

 

●冷却水は硬水か否かを確認する。硬水は石灰分が多いから、湯が高温になると石灰分が析出し、固まりパイプやノズルに詰まる。だから冷却水には向かないのある。

 

●ノズルは必ずローテーションして使う。周辺に間を作り、吸い込み空気で冷やしたりして詰まりを防ぐ。

 

●内部の金属面には煤塵が溜まらないようにする。たとえSUSであっても、煤塵が溜まると酸が濃縮し腐蝕する。

 

●ノズルには必ずフレキシブル配管でつなぎ、フレキシブル配管はノズルが抜ける長さにする。ノズルの詰まりを取り除くために時々取り出して、外部に向かって噴霧してチェックする。

 

●水圧は20kg/cm²を使用し、ノズルは出来る限り、噴霧水滴を微細にするものを使用する。同時に高温ガスに触れるため、材質的に錆び易いものは避ける。

 

 

9.塩化水素の問題点。

 

  塩化水素は人間にとっても有害であるが、焼却炉にとってはその耐火材を摩耗させ、構造材である鉄やステンレスを腐食させることは知られている。元々塩素は自然界に単体として存在することはなく、そのすべてが海水や岩塩として存在しており、それは人間も含めて地上に棲む全ての生物にとって、なくてはならない物質であった。それはナトリウムという元素と強固に合体し、塩と言う存在としてあった。だから人間によってこれが分解され、塩素が単独で自然界に放出されたとき、これに打ち勝つ生物は存在しなかった。これが人間をして、殺虫剤、除草剤に使わしめた理由である。

  塩素は人間にとっても猛毒であり、これを存在させるためには安定したものにしなければならない。ポリ塩化ビニルという物質は、常温では安定しており、医療の世界でも使用されるもので、電気的にも絶縁性は非常に優れたものであるが、何分にも熱に弱い。火事の現場で発生する危険なガスは一酸化炭素とともに、建築資材に多く使われている塩化ビニルが発する猛毒、塩素ガスである。

  塩素ガスを除去する方法としては、塩素ガスの親水性を利用して、水噴霧を行い、塩化水素水(希塩酸)として取り除く方法である。それ以外、中和剤として消石灰(Na(OH)₂)を吹き込んで、塩化カルシウム(融雪剤)にするか、苛性ソーダーを吹き込んで塩(NaCl)にするか、今のところこれしかない。

 

 

-1.有機塩素化合物について 

 

  直鎖の有機物でも不完全燃焼(熱分解)によりベンゼン核をもった化合物に変化する。不完全燃焼によるススは、炭素原子が6角型に結合した形をしている。現在話題になっているダイオキシン分子形態にも、ベンゼン核があり、前駆体とされている。ダイオキシンの問題は神経質になることはないが、内容をよく理解しておくことで、十分に避けられる問題で、現在理解されている範囲で説明する。

 

 

〔注〕ダイオキシンという名称は正しくない。正確には1,4-ジオキ(dioxine)だがこれは違う物質である。猛毒物質の方は2,3,7,8四塩ジベンゾパラジオキシン(TCDD)=英語風に読むとダイベンゾパダイオキシンと云うが慣習上ダイオキシンと呼ぶ。

 

 

-2.ダイオキシンの生成

 

 猛毒ダイオキシンは、ベンゼン核2個を酸素原子2個でつないだ構で、そのベンゼン環に塩素が結合している。塩素は1個から8個まで、ベンゼン核に結合出来るので、その位置と数によって性質が異なり、理論的には75種類存在することになり、総称してポリ塩化ダイオキシン(PCDD)という。ダイオキシンの生成機構としては【有機塩素化合物が300℃~600℃の温度で、不完全燃焼の結果、熱分解により生成】説と【熱分解によって生成した塩化水素と未分解の有機物が、電気集塵器内でオキシクロネーション反応を起こした結果生成。電気集塵機内の塩化第二鉄や塩化第二銅は触媒として作用する】と推測される。

 

 

 

 

 

 

 

 

12)に続く。