7)二次燃焼室の作り方

 

◎二次燃焼室の造り方(写真1992.5 1993.7 200.4を参考)

 

●円筒の二次燃焼が熱効率は一番よく、ショートパス、偏流も無く理想的であるが、コスト的には割高であり、充分な重量に耐える構造や受けが必要となる。

 

●二次燃焼の内部には急激な内径の変化や形状の変化、ガスが溜まりやすい空間を設けないこと。

 

●空気穴は放射状に吹くように配置、材質はステンレスが望ましい。空気穴径は25φ~32φにして、出来る限り偏流やショートパスを防ぐようにする。

 

●静圧300mmAqの供給空気では、1400mmφの内径までが限度である。空気を中心まで届かせるためには、静圧300mmAq(3.1kPa以上のブロアーが必要。

 

●空気穴は外周に100150mmの空気だまりを作り、そこに内径との間に空気穴を繋ぐ。フランジは空気だまりの外に設ける。

 

●炉内への供給口(マンホール・防爆扉)は必ず炉内が掃除が出来るように考える。小型の焼却炉では、一次燃焼の出口の軸線上に防爆扉をつける。

 

●鉄板は4.5mm、補強材は5075mm(厚さ69mm)のフラットバーを使用する。フラットバーのピッチは300450mm、耐火材の厚みは150mとする。

 

●耐火材のアンカーは本体同様、ステンレスの10Ф-Y型を鉄板に取り付けるピッチは150mm、千鳥、隣り合う二つは90°回転して溶接。アンカーにはポリエチレン被膜付(既製品)のものを使用する。

 

二次燃焼室は乾燥炊きも大型で3ヶ月、小型でも2ヶ月くらいの本乾燥焚きが必要で、バーナーを消しても温度が安定する迄が本乾燥炊きである。ガス測定、ダイオキシン測定は、その後に行なうべきである。

 

二次燃焼室が完全に働くと、自燃が可能になる。完全に乾燥したという目安は、一次燃焼温度より二次燃焼の温度が高くなり、温度が安定して長時間続く。一次燃焼室より温度が高くならない二次燃焼は、その機能が十分働いていない。

 

 

◎硫黄酸化物(SOx)と窒素酸化物(NOx)。

 

  硫黄酸化物(SOx)は成分に硫黄分の多い、タイヤ等の合成ゴムをやした場合に含まれるのと、燃料に含まれる硫黄分が、燃焼温度で酸素と化合したものであり、SOxは喘息の原因となる。一方窒素酸化物は成分中の窒素が多いか少ないかにかかわらず、炉内が1100℃以上になった場合、空気中の窒素が酸素と反応してNOとか、NOとなり、これらをとめてNOxとよぶ。高濃度のNOxは人の呼吸器に悪影響を与える。

   大防法ではSOxの基準が、都市部ほど厳しいK値という基準になっている。K値=q/(10³×He²)という式で求められる。〔q=硫黄酸化物量、He=煙突の補正高さ。〕である。NOx250ppm/N以下と決められている。900℃以下で燃やすと6575ppmに抑えられる。1100℃を越えるとNOxは極端に増えるので、これ以上高温で燃やすことは避ける。

 

 

◎硫黄酸化物のK値。

 

 全国県庁所在地、及び自治体に置ける最もきびしいK値をまとめた。一般的には大防法施行規則の別表1及び大防法施行令の別表3から調べることが出来るが、詳しくは上記施行令と施行規則で交付された数値のうち、県庁所在地のK値以下の表記は県内で最も厳しい市町村のK値である。県庁所在地が一番厳しい数値場合は、以下の市町村を省略する。

 大防法施行規則の第七条の「特別排出基準」で示されたK値の表示区域は、より市町村をより細分化されており、下記には概略として括弧内に表記した。詳細は「廃棄物・リサイクル六法」を参照されたい。

 

札幌市4.0/ 青森市14.5八戸市6.0/ 秋田市8.76/ 山形市14.5/

盛岡市17.5宮古市・釜石市14.5/ 仙台市7.0/

島市17.5いわき市6.0/

水戸市17.5鹿島郡鹿島町・神栖町・波崎町4.5(2.34)/

宇都宮市8.0/ 前橋市17.5高崎市の一部6.0/

さいたま市9.0川口市・草加市・蕨市・他3.5(2.34)/

千葉市3.5(1.75)/ 東京都特別区3.0(1.17)/ 横浜市3.0(1.17)/

甲府市17.5/ 長野市14.5/ 新潟市6.0/ 富山市5.0(2.34)/

金沢市8.76/ 福井市17.5敦賀市8.0/ 岐阜市11.5/

静岡市10.0清水市庵原郡油比町・富士宮市・富士市・他3.5(1.75)/

名古屋市3.0(1.17)半田市・碧南市・刈谷市・他3.5(1.75)/

津市17.5四日市市・三重郡楠町・朝日町・川越町3.0(1.17)/

大津市8.76/ 京都市3.5(2.34)/

大阪市3.0(1.17)岸和田市・池田市・高槻市・他3.5(1.75)/

神戸市3.0(1.17)姫路市・明石市・加古川市・他3.5(1.75)/

奈良市17.5/ 和歌山市3.5(1.75)/ 鳥取市17.5/ 松江市17.5/

岡山市6.0倉敷市・他3.5/ 広島市7.0福山市・大竹市3.5(2.34)/

山口市17.5宇部市・小野田市・徳山市・岩国市・他3.5(2.34)/

徳島市8.0/ 高松市11.5丸亀市・坂出市・他6.0(2.34)/

松山市11.5新居浜市・西条市3.5(2.34)/ 高知市17.5/

福岡市8.76北九州市・京都郡苅田町・大牟田市3.5(1.75)/

佐賀市17.5/ 長崎市8.76/ 熊本市14.5荒尾市6.0/

大分市3.5(2.34)/ 宮崎市17.5延岡市8.76/

鹿児島市14.5川内市11.5/ 那覇市9.0 

 

 

 

◎塩素ガスと塩化ビニル(PVC)

 

●焼却炉を一番傷付けるのはPVC(塩化ビニル)、塩化ビニリデン等の塩素化合物であり、廃プラ全般ではない。PVCは建築資材に多くトユ、パイプ、廻縁、波板、チューブ、電線の被覆、レザー、車の内装(シュレッダーダスト)、医療廃棄物には特に注意。塩化ビニリデンは商品名がサランで、スピーカーのサランネットや台所用品のサランラップである。塗料や接着剤、インクなどにも含まれている。

 

●解体木くずや一般廃棄物にPVCが混ざっている事は常である。計算書でも重量比で0.1%(解体木くず)~0.6%(一般廃棄物)程度は見込んでいる。焼却物にPVCがどれくらい混ざっているかをチェックしておくことを忘てはならない。PVCとポリエチレンやポリプロピレンの見分け方をよく覚えておく。技術者は燃やすものの知識が客以上に無ければ焼却炉を語ることは出来ない。

 

PVCが燃焼物に入っている場合は、塩素除去するまで(消石灰噴霧)燃焼ガスが漏れてはならない。塩素ガスが煙突から放出すると周辺の草木の色が変わる。

 

PVCの多い場合は、キャスタブルは年間20mm~30mm磨り減る。

 

●塩素ガスは空気に相当薄まっても匂いがする。周辺のものが錆びるので、風が民家のある方向に流れると、必ず苦情が来るか、県に告知される。塩素が含まれる場合は、必ずその対策を考える事。

 

 

◎塩化水素除去剤の反応。

 

   塩化水素は水に良く溶け、アルカリと良く反応する。中和吸収剤とて消石灰、生石灰、炭酸石灰、苛性ソーダ、ソーダ灰。反応式は

 

 HClNaOHNaClHO   

                                苛性ソーダ(NaOH)=水酸化ナトリウム

 

 2HClCaClCaCl2HO 

                                消石灰(CaCl)=塩化カルシウム 

 

 

8)に続く。