58.焼却炉のロストル。59.東南アジアと焼却炉。60.耐火物の種類。

58.焼却炉のロストル

 

 ロストルとは日本語で火格子、オランダ語のROOSTERからきており、元々は木材や石炭ストーブで使われていた。焼却炉ロストルが必要なものと、好ましくないものがある。焼却炉の良く燃える条件に、燃焼物の底から空気を送るという事がある。燃焼物が木くずを中心に紙くず、繊維くずの混焼でよかった頃はロストルの有無はあまり影響がなかったから、あるほうがよく燃えるとされていた。

 しかし廃プラのように溶けて燃えるものがあると、ロストルの上で溶けて下に落ち燃えないで液状に溜まる。だからロストルは使用しない焼却炉が多く現れた。ロストルに関しては絶対に使用した方が良いものと、使用するとダメなものがある。ダメな物の代表が医療廃棄物の焼却炉である。ロストルの隙間から燃えないで落ちて、熱がかからない構造だと、二次感染の恐れがあり、ロストルの下でもバーナーを設けて焼くことが必要となる。廃プラも同様で医療廃棄物や廃プラは固定床で燃やすか、流動床で燃やす方が良い。

 一方オムツや油分水分を含んだウエス、動物の死体や残渣はロストルを必要とする。オムツやウエスは固定床だと、炉床側に燃焼空気が回らず燃えるのに時間がかかる。動物の死体や残渣は油分水分が多く、固定床で燃やすと煮たような状態になり、油分水分を分離するためにロストルは絶対に必要となる。

 

 ところでロストルにはどんな材料が向いているか、ストーブなどは鋳鉄が用いられる。焼却炉も鋳鉄の既製品か、特注品を用いるのが最適である。私はステンレスの中にを通して水冷にしたり、ステンレスの中に耐火材を詰めて使ったが、1mを超えると高温と焼却物の重量で反り始める。だから1mを超える場合は、中間に支えを工夫しないといけない。水冷の場合はお湯を取ることが出来るが、急激なお湯の膨張は十分な安全を考慮する必要がある。ロストルの向きだが、掃除穴、灰出し口に向って隙間の長い方向を向けることが必要で、掃除がし易くなる。

 焼却炉は炉床から燃焼空気を入れると、一気に1200℃程度まで炉内温度が上がる。だから炉床からの燃焼空気は、高温になるとインバーターなどでブロアーの回転速度を落としたりして、温度コントロールが必要である。高温では、クリンカーによる空気孔のつまりや、窒素酸化物の増加に注意することだ。

 

 

59.中国や東南アジアへの焼却炉

 

 私は中国にも東南アジアのどこの国にも行ったことは無い。しかし私の周りからは、行くよりも多い情報が聞こえてくる。実際に行った人よりも焼却炉廃棄物に関する情報は多いかもしれない。しかし、行ってみたいと思う情報は一件もお目にかからないし、聞くたびに絶望感が増すばかりで、むしろどうすれば解決出来るかと悩むばかりである。

 日本のごみ事情が優秀であると思えないが、それでも日本は一般廃棄物と産業廃棄物が区分されている。褒められる状態ではないが分別も進んでいる。医療廃棄物や、医療系のオムツ、等も区別されている。焼却に対する廃棄物処理法や大気汚染防止法、ダイオキシン類特措法などの環境に対する法律も、整備されており大部分のごみ処理業者はこれを守っている。

 

 しかし、中国や東南アジアにはごみを分別するような制度や文化はあるのだろうか。焼却に対する環境の規則もあいまいだと聞く。まして焼却炉にはほとんど守るべき基準もないし、基準は役人や上級幹部にコネがあるとか、お金がどうだとか、およそ焼却炉の技術に関係のない話が多い。煙を出せば焼却炉をハンマーで叩き壊しに来る処もあるようだ。日本でも蒸気と煙の区別もつかず住民の苦情がある。蒸気と煙を、或いはその中間物を誰がどのように判断できるのか。それさえも判らない状態で叩き潰されては、まともな焼却炉メーカーは怖くて手が出せない。ごみ水分がある限り蒸気は消せないし、特に冬場は大きく目立つ。煙と見られる蒸気分は、まともな焼却炉ならガス冷却の水噴霧であるが、元々ごみに含まれる水分で、これは焼却炉の内部で無くなる物ではない。

 ごみの状態も一般廃棄物と産業廃棄物では、水分の割合が大きく違う。日本の優秀なストーカー炉でも、一般廃棄物水分50%程度がMaxで、それ以上だとバーナーによる追い焚きや、水分を減らすロータリキルンを直結しなければ処理は困難となる。食文化の栄えた国でのごみ水分量は50~60%となり、ストーカー炉の能力の限界を超える。日本の大メーカーでさえ中国や東南アジアごみは非常に難しいと聞く。

 

 小型の焼却炉で低温で燃やすや、日本の基準では通らないを海外、特に中国や東南アジアに輸出する業者がある。燃やすごみの制限、特に水分の多いごみはどうすればいいのか。焼却炉にとって水分は一番の難敵である(入門47)。水分の多いごみ固定床焼却炉では、どんなに高温で燃やしても空気が届かなくては燃えないし、黒い塊になる事は目に見えている。よく燃える木くずや紙くず等の金目のものは選別して抜き取られるとも聞く。

 選別の文化、ごみ水分を減らす文化がなければ、ごみをまともに燃やす焼却はありえない。日本の焼却炉メーカーも、ごみを低温で燃やせる等と売り込むよりも、それが実際に減量につながる焼却炉を造って頂きたいと切に思う。日本の技術は詐欺だと言われる前に・・・・。

 

 

60.耐火物の種類と使い方。

 

 耐火物には大きく分けると定型耐火物と不定型耐火物がある。定型耐火物は予め成形された耐火物の総称で、「耐火煉瓦」と呼ばれるもので高温の焼却炉溶鉱炉に使われるものである。耐火煉瓦は炉の形状によって、アーチ状にする場合などのために形状がばち型になったものや、直方体になったものがあり、素人が組むのは難しい。「耐火煉瓦」は専門家によって組まれると考えたいただきたい。これ以外に「耐熱煉瓦」と呼ばれる熱伝導率の低いものがある。

 

 不定形の耐火材としては「キャスタブル耐火材」と呼ばれる水で練り合わせて、木材や金属で作った型に流し込むもの(入門18,51参照)とスプレーで吹き付けるものがある。また、キャスタブル耐火材には耐水性のものがあり、水噴霧をする場合にはこれを使用した方が良い。何故なら塩素を含んだガスは、水噴霧すると希塩酸となり、鉄材でもステンレスでも侵される。こんな場合は耐水性キャスタブルが最適である。

 また、の補修やキャスタブルの成型したものを組み立てる場合に使う「プラスチック耐火物」と云うものがあり、ちょうど粘土細工の要領で使用でき、耐熱温度は1400℃を超える。粉末状のキャスタブルに対して、粘土状の直方体で梱包して販売されている。の補修や目地にも使用出来る便利なものだ。「キャスタブル耐火材」と同様、「プラスチック耐火材」もAGCプライブリコの製品である。「耐火煉瓦」の目地として使う「耐火モルタル」もこの分類になるのかもしれない。