19.耐熱塗料。20.軟水と硬水。21.二次燃焼の働き。

19.耐熱塗料の話。

 

 耐熱塗料についてはあまり知られていないのではないだろうか。実は私も誰が教えてくれたのか知らないが、最初に設計をした頃(平成2年頃)教えられたらしいが記憶がない。多分、町の塗料屋さんに勧められたのではないだろうか。塗料の一斗缶に「タイネツ化学」の文字が入っており「ネツゾール」という商品名だったと記憶している。

 

 自分で買い付けしたのが平成5年ごろで、一缶4~5万円くらいだったので、当時としては相当高級な塗料だったに違いない。「5ton未満」クラスの焼却炉だと、下地の黒を十数本手配したものだから、鉄工所も大変だったと思う。この耐熱塗料に使い方としては、鉄工所で焼却炉を作ると、すぐに下地の黒を刷毛塗りした。それから耐火材を打ち、現地に運び込んで焼却炉を組み上げる。配管、配線を終り、乾燥焚き一週間ほどかけて行い、炉の温度を1000まで上げる。これで耐火材から出る水も止まり、耐火材の焼結も耐熱塗料の焼きつけも終わることになる。  

 

 それから塗装屋さんに下地の汚れ(耐火材から噴き出した水のあと)を綺麗に落として貰い、耐熱のシルバーの塗装をローラーか刷毛塗りで行って貰う。タイネツ化学の技術であった「ネツゾール」という塗料は、大倉ケミテック㈱に引き継がれているようなので紹介しておきたい。ともかく焼却炉の燃焼室の温度は800以上で燃やすので、実際には950~1000を覚悟しておく必要があり、外壁温度は最低800耐熱塗料が必要である。この塗料の性能を発揮するためには、耐熱の下地を刷毛やローラー塗りして、塗料の平米あたりのグラム数を確保(溶剤で薄めない)しなくてはならない。その手間を惜しむと塗料の性能(耐熱と経年変化)は保証出来ないことになる。

 

 

20.軟水と硬水。

 

 水には硬い柔らかいがあるのをご存じだろうか。最近は水を売っている時代だから、飲み水としても美味い水と不味い水があるのを、それで知っている人も多い。日本人はほとんどが軟水を飲料水としているから、中国やヨーロッパの硬水の地域に行くと、腹を壊す人が多いと聞く。水の美味い不味いは、水の中に含まれるミネラルや、空気によって決まる。蒸留水が不味いのはミネラルや空気を含んでいないからと言える。人間も蒸留水のような人は扱いにくい(ちょっと余談である)。

 


 硬水とはカルシウムイオン(Ca)や、マグネシウムイオン(Mg)が比較的多量に含む天然水である。日本では水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオン、これに対応する炭酸カルシウム(CaCO₃)の濃度をppmに換算して表し、200ppm以上の物を硬水と言う。このカルシウムイオンやマグネシウムイオンは、煮沸すると炭酸塩として除去されるが、これが水垢となってパイプに付着する。硬水は石鹸の泡が出ない。水が美味いとか不味いの問題ではなく、これを使うと熱交換器がダメになる。石灰岩を多く含む地域は、ぜひとも軟水器を使って頂きたい。私も工場のゴミを燃やして、事務所を暖房していた熱交換器が、水垢ゆえに使い物にならなかった例を見てきた。硬水の地域の、シェル&チューブタイプの熱交換器(煙管ともいう)は、水側(チューブの外側)の掃除が大変だと言える。

 

(追記)全国の水道水にも水の硬軟がある。水の硬度を表す式は   硬度(㎎/ℓ)=カルシウム濃度(㎎/ℓ)×2.5+マグネシウム濃度(㎎/ℓ)×4.1 軟水<60 中程度の軟水(中硬水)=60~120   硬水=120~180 非常な硬水>180

 

全国の県の水道水の平均値   (中硬水)①沖縄84.006 ②千葉81.775 ③埼玉75.015 ④熊本70.449    ⑤茨木66.469   ⑥東京65.804 ⑦神奈川61.825    ⑧福岡60.815

 

(軟水) ①愛知26.476 ②山形27.801 ③島根28.213 ④宮城28.660   ⑤広島28.819 ⑥秋田30.284 ⑦富山30.461 ⑧新潟32.188 ⑨北海道32.818 ⑩福島35.090   (記載外の県は全て60以下の軟水)

 

理解しにくいのでミネラルウオーターで比較すると(硬度の高い順から)

①エバー(HaPAR)1849 ②クールマイヨール1612 ③コントレックス(Contrex)1468  ④グロルシュタイナー1308 ⑤サンペレグリノ674  ⑥ペリエ(perrier)417 ⑦ヴィッテル(Vittel)315 ⑧エビアン(evian)304 ⑨アイランドチリ(islandChill)117 ⑩フィジーウオーター105 ⑪富士山麓のおいしい水63  ⑫ボルビック(Volvic)60  ⑬クリスタルタイガー38  ⑭森の水だより34.6  ⑮おいしい水六甲32 ⑯日田天然水32 ⑰南アルプスの天然水30 ⑱富士山のバナジウム天然水29 ⑲い・ろ・は・す27.7 ⑳熊野古道水10

 

 

21.二次燃焼の働き。

 

 ダイオキシンの権威でもある、京大の名誉教授・平岡正勝先生が平成9年の新聞に、二次燃焼室は非常に大切なものだと書かれた一文に、私は非常に元気づけられた。20年くらい前から造られている箱型の二次燃焼室は、ショートパスや偏流が多く、ほとんど二次燃焼室の働きをしていない。それは製作価格を主体に考えられ、炉の中に単なる空間を造ったにすぎない。
 

 二次燃焼の温度と、一次燃焼の温度グラフを見ると判ることだが、正常な運転をしていれば、少なくとも一次温度より二次温度が高いのが普通である。一次燃焼室で燃え尽きて、二次燃焼室の温度が上がらないのは、単段燃焼に無駄な空間を一つ追加しただけの物にすぎない。「働いていない二次燃焼室」は常に一次燃焼温度より温度が低い。これでお客さんが満足しているのは、知らないというよりメーカーが知らないだけだと言える。 

 

 焼却設備は常に計算の上に成り立っている(計算が間違っていればそれ以前の問題)。物が燃えるのに必要な空気量(理論空気量)を計算して、それに空気過剰係数(m)を掛け、出てきた実際空気量を一次二次に分ける。この分けた比率に、運転者が燃焼物質に応じて操作できるようにし、それをもとに運転者を指導してあげればよい。  

 

 それ以前に二次燃焼空間が小さすぎると、二次完全燃焼が出来ず煙突から炎を出す焼却炉が出来る。法律に「炎や黒煙を出す焼却炉⌋と書いてあるが、昔にはそんな焼却炉が数多くあったのだろう。二次燃焼バーナーは乾燥焚きの段階と、焼却炉の始動時の予備加熱に必要で、普段は二次燃焼室にバーナーが無くても、自燃して二次燃焼室を900~950に保てるものがベストと言えるだろう。 

 

 予備加熱二次燃焼室一酸化炭素発火点609℃以上に加熱すること(そこまで温度の上がらないはバーナーが小さい)で、それ以上に加熱しても煙突がドラフトをおこして、加熱した空気を吸い出して平衡状態となり温度は上がらない。その状態で一次燃焼室焼却物点火すると、発生した一酸化炭素二次燃焼酸素と交じり、自然が始まる。自然が始まると二次燃焼のバーナーを消しても、空気を送り続ければ酸化反応が持続して自然が続く。予備加熱は800℃まで行う必要はないし、予備加熱焼却炉始動時の煙を消すことが出来る。二次燃焼のない予備加熱をして、始動時の煙を消すことは出来ないだろう。

 

 余談になるかも知れないが、二次燃焼室の温度が1100℃を超えるとNOx(窒素酸化物)が極端に増えることがあるから注意されたい。

 
 (追記) 悪い二次燃焼の「現象」と(対策)。

1.自燃が起こらない。「二次温度が常に一次温度と同じか低い」。(配管が細く燃焼空気が少ないか、燃焼ガスと混ざらない)。

2.が消えない。「煙突から常に薄煙りが混ざる」。(空気量の不足か、偏流で空気とガスが混ざらない)。

3.バーナーのon-offで二次温度が極端に変わる。「温度センサーがバーナーの火炎の温度を計っている」(温度センサーの位置をかえる。最適は二次燃焼室の末端上部)