16.ダイオキシンの事。17.ステンレスの腐食。18.耐火材の打ち方。

  16.ダイオキシンの事。

 

 ダイオキシンの正式な名称は、二つのベンゼン基の周りに4つの塩素が付いている状態の物を「テトラクロロジベンゾ」と呼ぶ。この二つのベンゼン基を二つの酸素が結んでいると言う意味で「パラジオキシン」と言う。ダイオキシン類で一番猛毒の物の正式名称は、2378テトラクロロジベンゾパラジオキシンと呼ばれている。2378というのはクロロすなわち塩素が付いている4つの位置を表現している。
 

 日本で最初にこの名前を付けた人は多分化学者ではないだろう。此の正式名称の最後の言葉ジ(di)オキシンがダイオキシンとよばれ、それが語源になっているが、普通に考えると「二つの酸素⌋という意味にしかならない。化学式の数字は全てギリシャ語のモノ①・②・トリ③・テトラ④・ペンタ⑤・ヘキサ⑥・ヘプタ⑦・オクト⑧・ノナ⑨・デカを使うことは大方の人はご存じだろう。これが判ればダイオキシンの正式名称であるテトラクロロ(4つの塩素)、ジベンゾ(2つのベンゼン基)、パラジオキシン(平行になった二つの酸素)の意味が理解できるのである。ダイオキシンと言う名称は化学的でもないし、英語でもなく、ギリシャ読みでもなく、略称でもない。余りにも有名になった言葉だから、ダイオキシンと広辞苑にも載っている。

 

 ダイオキシンは毒性が強いという話だが、直接に浴びて死ぬなら塩素塩化水素一酸化炭素の方が毒性が強いだろう。「ダイオキシンで死んだ人はいない」とどこかの学者が言っていたが、確かにその通りである。ダイオキシンを飲まされたとか言っていたどこかの国の大統領は、皮膚がんのような顔をしていたが死んではいなかった。ダイオキシンの怖いのは遺伝性であり催奇形性で体内の脂肪分に蓄積され、将来の子孫の遺伝子に影響を与える。ベトナムの戦禍で「枯葉剤⌋をまかれ、それによる奇形児の誕生を否定する人もいるが、これはダイオキシンの影響と云って間違いはない。風土病だと言う人の言葉は単なる憶測、言い逃れに過ぎない。

 ともかくダイオキシンの毒性はいずれ、何代もの後の子孫に現れて証明されるだろう。しかし、私たちはそれを見ることは無いが、ともかく、私たちは未来への禍根を残してはいけない。 

 (追記)ではどんな炉がダイオキシンを出しにくいかというと、800℃の温度で燃焼して急激に200℃以下に急冷する、水を噴霧してガスの温度を落とす構造を持ったです。小型焼却炉はこんな構造を持っておりませんし、まして小規模焼却炉(0.5㎡・50kg/h以下)はダイオキシン測定も免除されていますから、ダイオキシンは出放題と考えていいでしょう。

 

 

17.ステンレスの腐食。

 

 ステンレスは錆びない金属として知られているが、その名を一般に知らしめたのは台所の用品や、水周りの家具類で使われている「18-8ステンレス⌋と呼ばれる、いわゆるクロム(Cr)18ニッケル(Ni)8%の鉄との合金である。鉄工として使う場合は「SUS304⌋として知られた優れものである。ステンレスが錆びない理由はCr合金独特の不働態皮膜が表面を覆っているためで、これがある限りステンレスは常に光沢を放っている。
 

 この不働態皮膜が破れるのは環境がpH2以下の酸性になっている時で、常時には決してありえない。焼却炉ではスクラバーなどで一度使った水を再度使うような場合は、必ず苛性ソーダ等で中和して使うので、水がpH2になるような使い方はしない。しかし焼却炉内にはばいじんというものがあり、これが小さくても付着するケースがある。普通は大量の水を持って流すが、時には焼却炉の処理量を極端にオーバーして使われるケースがあり、想定外にばいじんが増えるケースがある。こんな場合は局部的にばいじんが残り、このばいじんに酸の濃縮が起こる。
 

 そうなればpH2より強い酸性状況が出来、ここで不働態皮膜は破れステンレス独特の腐食、孔食腐食が起こり金属に厚みがあっても、これを貫通する不規則な穴が開く。だからステンレスを使った場合はばいじんが溜まり易い構造を避けるべきであろうし、焼却炉の処理能力の数倍の過剰処理をすることは厳に慎まなければならない。この構造が避けえないときは、耐酸、耐水、耐蝕性の塗料を有効に使う以外避けようはない。

 

 

18.耐火材(キャスタブル)の打ち方。

 

 キャスタブル(正式名)は通称キャスターと呼ばれているが、これは商品名である。コンクリートと同様に粉状でこれを水で溶いて泥状にする。コンクリートと違う点は  1.すでに配合された状態で25kg/1袋の単位で販売されている。2.コンクリートのように流し込めるほど柔らかく溶かない。3.コンクリートより固まるのが早く、手で触れないほど発熱をする。4.セパレーターなどで決められた型板の間に押し込むようにしてうち、ハンマーなどで型板を詰める。5.質がコンクリートより微妙で水質の判らない湧水などが使えない。6.炉壁の鉄板にY型アンカーを溶接し、これをフックとして鉄板に固着する。7.必ず所定の乾燥炊きを行い、一週間ほど時間をかけて、1000℃まで温度を上げて焼結する。
 これくらいの違いがあるから素人にはなかなか扱いにくい。しっかりとした焼却炉を作りたい場合には、最初は専門家に任せることだ。耐火材の加工はコンクリートの工事に似ているが、耐火材屋さんの手間賃はコンクリートのそれより割高になると覚悟願いたい。トン当たりの手間賃は当然のことながら、小型炉(少量)になるほど割高になると考えたほうがよい。
 焼却炉の補修に関して言えば、プロに頼まず工場内で行う場合は、耐火材の欠けた(鉄板やアンカーが露出)周辺をブレーカーなどで壊し、アンカーを所定数だけ溶接する。型枠になる板(木または鉄)で囲い、セパレータ等で固定する。キャスタブルは硬化する時間が早いため、少量ずつ練って手早く詰め込むこと。ミキサーを使う場合でも出来れば小型(0.5~1ton程度)のミキサーで練り、手早く作業をして1回ずつ空にすることだ。キャスタブルを押し込んだあとは、型板をハンマーなどで叩いて振動を与えて隙間を詰める。バイブレータを使って詰め込まれる場合は、バイブレーターを使いすぎるとキャスタブルに層が出来やすく使用時にクラックの原因になる。
 
この時の注意だが、焼却炉内焼けたキャスタブルと新しいキャスタブルは固着しない。どうしても固着させたい場合は耐火材の専門店に聞いて、専用の接着材を用いることをお勧めする。