35.軽微な変更。36.窒素酸化物。

35.「軽微な変更」とは。 

 

 ⌈廃棄物の処理及び清掃に関する法律⌋(以下⌈廃掃法⌋と略す)に⌈軽微な変更⌋という言葉が出てくる。これは焼却炉を改造する場合、自治会や周辺の同意書をとったり、環境アセスメントを行わずに変更してもよいと、県(又は政令市)が認める変更を言う。廃掃法はこのように書いている。
 

 1.法第9条第1項又は第15条の2の4第1項に規定する変更の許可又は法第9条の3第7項に規定する変更の届出を要しない⌈軽微な変更⌋は、従来、主要な設備の変更を伴わず、かつ、処理能力の10%以上の変更を伴わない変更とされていたところであるが、今回の改正により、次の(1)から(5)のいずれも伴なわない変更をしたこと。 (1)施設の処理能力の10%以上の変更  (2)施設の位置又は処理方式の変更 (3)施設の構造又は設備であって、施設の種類ごとにさだめられたその中核となる設備に係る変更又は設計計算上達成することができる排ガスの性状、放流水の水質、その他の生活環境への負荷を増大させることとなる変更 (4)排ガス及び排水の量又は処理方法の変更    (5)維持管理に関する計画の変更。となっているので、以下に簡単な説明を加える。
 

 (1)に関して言えば処理能力を10%以上変えると軽微な変更とされないということだ。県によっては計算書上の処理能力は10%どころか、全く変更は認められない。(2)焼却炉の設置場所を動かしてはいけないと言うことで、主にとは炉本体と煙突の位置及び高さである。(3)焼却炉本体の炉床面積、内容積の変更は出来ない。(4)計算書上で示される、排出ガス量と冷却水量の変更は許されないと言うことと、排ガスの冷却方法の変更はダメということになる。(5)焼却炉維持管理のやり方を変えて、周辺住民の生活環境を悪くなるようにはしてはいけない。

 

 以上が⌈軽微な変更⌋では出来ないことだ。 

 

 

36.窒素酸化物。 

 

 NOx(窒素酸化物)と称されるものは、酸化の度合いが低いものから、O,NO,NO,Nである。NOxは燃焼中に窒素と酸素が反応して出来る化合物であり、生成状況により大きく分けると「フューエルNOx」とサーマルNOxがある。燃料成分中の窒素成分が酸化して出来るのが「フューエルNOx」であり、焼却炉やエンジン中の高温状態で生成するのがサーマルNOxである。ここでは焼却炉において出来るサーマルNOxを主体的にとりあげる。 

 

 NOx燃焼温度の影響がきわめて大きく、燃焼排ガス中に存在するのは大半がNOであり、少量のNOが含まれる。燃焼温度800℃~900℃と低い場合は燃料中の窒素分に起因する微量のが含まれる。1300℃以上になると急激にNO生成量が増大する。産業廃棄物焼却炉で言えば、1300℃の炉内温度となるケースは少なく、溶融炉かアスベスト(1500℃以上)を分解する炉より外に聞いたことがない。一般の焼却炉では最高でも廃プラを燃やす場合1200℃になるケースはあるが、非常に稀である。しかしクリンカーが出来易い炉では、部分的に灰の鎔ける温度1100℃~1500℃)になっている可能性がある。高温は炉の内部に吹き込まれる空気の流れによって起こっている。十分注意されることだ。 

  

 このNOは大気中で(無水硝酸)となりHNO(硝酸)の形で酸性雨の一成分として地上に降り注ぐ。焼却炉から放出されたガスが地球温暖化や酸性雨の原因となっている。「天に向かって唾をはく」とはこのことかもしれない。