5)燃焼の理論

 

4.燃焼の理論。

 

  燃えるという現象は、炭素と酸素の結合(酸化)ということである。完全燃焼率とは、一酸化炭素(CO)と二酸化炭素(CO)との比率いい、完全燃焼とはCOが0となりCO100%となる状態をいう。

   炉内において物が燃えるということは、炉内には常に酸化層と還元層でき、空気の供給が少なくなると、乾留層が出来る。多段燃焼の場は、一次燃焼室での空気の供給を少なくして乾留ガスを発生させ、二次燃焼以下で完全燃焼させる。この燃焼方式をガス乾留方式という。

 

酸化層Oxidizing zone)。

 

   物質が酸素と反応する事を酸化という。下方より送られる燃焼用空は上方から移行してくる燃焼帯と燃焼ガスと接触して、C+O=CO₂  CO+1/2=COの酸化反応が行われる。コークス化した燃料は、更に燃焼が進んで灰化する。特にコークス層の下方は酸化層になるので十分に酸素が有り、一酸化炭素は酸素と反応して二酸化炭素となる。

 

 

還元層Reducing zone)。

 

   還元とは酸化の反対の反応過程であって、酸化層で燃料中の炭素が酸素と反応して生成した炭酸ガスが、さらに炭素と反応して一酸化炭素に還元される層のことである。還元層と酸化層は共存しているもので単独による反応は行われない。

 

 

乾留層Carbonization zone)。

 

 火層の上部にあたり、下方から高温ガスと高温のコークス化層(還元層、酸化層)により加熱されて可燃焼の分解ガスを発生する。空気は下方の酸化層で消費されて少なくなっている。還元作用がすんで、もっぱら乾留がおこっている部分が乾留層である。

 

 

熱灼減量Ignition loss)。

 

 廃棄物を高温で熱することにより、揮発・減量する部分をいう。主有機成分、可燃成分に由来するものであるが、その他に塩化物、硫酸物、硫酸塩、硝酸塩、アンモニウム塩等の揮発成分を含む。廃掃法では10%となっているが、5%以下に抑えなければ、普通の炉とは言えない。設計者、運転者ともに努力が必要である。

 

 

4-1.燃焼速度(Burning velocity)

 

   燃焼速度を支配するのは可燃分子と酸素分子との接触の良否である。固体燃料では空気と接触するのは表面であるから、接触面積の大小が焼速度と密接な関係にあり、燃焼物が細かい程接触面積が大きくなり、燃焼速度が早くなる。表面分子の燃焼によって生じた燃焼ガス(一酸化炭素、二酸化炭素)が、燃焼物の外面を包む為、内部の可燃物が酸素に接することが出来ないから、燃焼が継続しない。この燃焼ガス層を通風作用によりとり除けば、燃焼速度が増加する。

 

 

-2.燃焼用実際空気量と空気比=m空気過剰係数

 

   可燃性物を実際燃やす場合、理論空気量では完全に燃やし切れない。可燃物と燃焼に必要な空気中の酸素を、瞬間的に接触させることは困難であり、無駄ではあるが、理論空気量よりも多い、余分の空気を供給してやらなければ、完全燃焼は出来ない。実際に必要な空気量の、理論空気量に対する倍率を空気比(空気過剰係数)=という。

 

 

4-3.理論燃焼温度Theoretical combustion temperature

 

   可燃性物質を燃焼室内で、外部への熱損失が0と仮定し、燃料が理論空気量で完全燃焼して達した温度である。火炎の理論燃焼温度は 

 

 Tth=Hlo×Cpm)  

 

pm(Kcal/N立米=理論燃焼ガスの平均定圧比熱。

l(Kcal/kg)=燃料の低位発熱量  Go(N立米/kg)=理論燃焼ガス量

 

 

-4.火炉熱負荷率。

 

   炉内で可燃物が燃焼して熱が発生する場合、燃焼室容積空間立米当り1時間に発生する平均熱量を熱負荷率という。即ちVの燃焼室で時間にQkcalの熱が発生したとき、燃焼熱負荷率は K=Q/Vkcal/hとなる。可燃物に対して、熱負荷を低く取りすぎると、不完全燃焼を起こす。助燃料を必要とする低カロリーの廃棄物、並びに難燃性物に対しては極力低くとる。熱負荷が必要以上低い場合は、温度上昇の維持が困で、助燃量を多く必要とする。

   又、廃プラの様な高カロリー物でも、発生熱量を急速に熱吸収媒体吸収する場合は、大きくとるのもよいが、高発煙性物で熱分解速度を抑えながら、乾留燃焼を行う場合は、熱負荷を低くとる必要がある。可能な範囲で熱負荷を大きくとると、燃焼室の容積を小さく出来、経済性に結びつく。

 

 

物質の発火点。

 

 物質を空気中で加熱するとき、着火源がなくとも発火するに至る、最低温度を発火点という。(理科年表による)

 

メタン(537℃) 水素(500℃) 一酸化炭素(609℃) 硫化水素(260℃)

エチレン(450℃) アセチレン(305℃) 硫黄(232℃)

古タイヤ(150~200℃) 木炭(250~300℃) 泥炭(225~280℃)

新聞紙(291℃) 木材(250~260℃) テフロン(492℃) 

スチロール(282℃)   メラミン樹脂(380℃) ポリプロピレン(201℃)

 

 

◎比重。

 

①真比重(True specific gravity)  物体の密風気孔容積(c)  開放気容積(o)及び空隙の容積(t)を除いた、物体のみの容積(v)に相当する水の重量で、物体の重量(w)を除した値である。

 w/a-(c+o+t)ρ

 

②見掛け比重(Apparent s.g.)均質な物質の比重測定法を、多孔質比重測定に適用したときに得られる値。

 w/a-(o+t)ρ

 

③かさ比重(Bulk density)粒体を容器に入れた場合、その容器と同積の水の、質量に対する粒体の質量の比。

 w/a×ρ  t・・・隙間 

 

 

◎燃焼温度。

 

   燃焼温度は一次燃焼室を780℃~900℃で燃焼させ、二次燃焼室を830℃~950℃程度で燃やすようコントロールする一次燃焼室の温を高くするとクリンカーの出来易い炉となる。二次燃焼室を1100り高くすると窒素酸化物の出来易い炉となる。一次燃焼室は出来るだ度を低く燃やし、クリンカーの少ない炉を作ることが、炉を長持ちせる秘訣である。

 

 

 

 

 

 (6)に続く。