27.離島のゴミ問題。28.六価クロム。29.炉内の掃除。

27.村や離島のゴミ問題を解消。

 

 村や離島の中には焼却炉がなく、一般廃棄物(家庭ゴミ)を大型焼却炉のある街や島(本土)にお金を払って、処理して貰っている地域があると聞いた。なぜ焼却炉を作らないのか、私はそのほうが不思議でならない。その村(離島)から一日に何トンの一般廃棄物が出るのだろうか。データによると村の人口一人当たり0.8kg/1日であるから、人口4000人の村の家庭ゴミの量は3200kg/1日である。
 

 法律で言えばガス化炉では炉床面積が2㎡未満、処理能力200kg/h未満の焼却炉を使えば、8時間で1600kgの処理が可能である。もし24時間処理が出来れば、4800kgの処理が可能である。一台で足りないなら少し離れたところに2台目を設置すればいいのだ。
 
一般廃棄物は水分が48~52%くらいである。大量の一般廃棄物はストーカー炉と言われる乾燥ゾーンのある大型焼却炉で一日50トン、100トンの処理をしている。大型炉はアセスメントも必要で、時間がかかるし、この大型炉を作れるメーカーは決まっている。それは製作費も10億円~300億円くらいの範囲で、メンテナンスも毎年製作費の2~3%はかかるから、小さな自治体では維持することが難しい。
 

 しかし、水分が64%もあるおむつは8時間1バッチのガス化炉で十分焼却が可能であり、私もおむつの焼却炉を改造してそのノウハウを持っている。おむつ一般廃棄物であるが、家庭ゴミに比べると水分も多い。村(離島)の一般廃棄物を燃やす焼却炉はこれより容易であるといえる。法律で言えば設置届だけで建設できる焼却炉であり、ダイオキシン測定だけが義務付けられている。
 

 村(離島)の一般廃棄物小型のガス化炉でなぜ解決しないのか、村(離島)の人達は知らないだけなのだろう。多額の輸送費がかかるようで、真実を知らせては損になるような、そんな利権が働いているのだろうか。このタイプの焼却炉で、8時間で1600kg16時間で3200kg24時間で4800kgの処理が可能である。しかもこの炉の建設費は1億円でお釣りがくる。 

 

28.六価クロムってなんだろう?

 

 もう15年くらい前になるだろうか、私の作った小型焼却炉六価クロムが大量に出た。灰や燃え殻の最終処分場の基準値は0.5mg/ℓであったが、おそらくそれの何百倍、500mg/ℓくらいだったと記憶している。当時、私も原因が判らず、とりあえず耐火材のメーカー等にも聞いて見たが、そんなところに原因は無かった。仕方ないから材木屋さんに頼んで新しい端材を分けて貰い燃やした。しかしせいぜい20%くらい減っただけ。もう一度燃やしてみたが100mg/ℓ以下にもならない。その時初めて、炉内に残留した六価クロムがあることを知った。多分防腐剤を塗ったパレットを燃やしたのが原因だったのだろう。残留した六価クロムは、2週間くらいを燃やし続けないと、無くならないことを経験したのだ。
 

 塩化水素でも3日から1週間で0に出来るが、重金属はこれほど長く炉内に残留し続ける厄介な代物だ、と知った。塩素は90%くらい灰の中に残留するものだ、それでも処分場の判定基準にはClやHClはない(トリクロルエチレンなどはあるが)。六価クロムは今のところ、燃焼温度を上げたら無くなるというデーターが無いので、私もどうしていいのか判らない。とにかく六価クロムを含んだ材料を、燃やさないということが大切なのだ。クロムが使われている商品としては黄色、緑、青の顔料、写真の廃液等々…注意が必要だ。
 

 電子というのはマイナス1価の電荷をもっているので、電子を1個失った原子はプラス1価の原子になる。だから六価クロムとは6個の電子を放出したCr原子と言うことになる。Cr原子は三価クロムと六価クロムが安定していると言われており、六価クロムは三価クロムから、3個の電子が放出したもの(酸化)ということで、六価クロムが還元して三価クロムになる。
 
三価クロムは今のところ無害とされており、六価クロムは有害物である。村田徳治さんの本によると、空気中の六価クロムの粉塵を吸いこんだり、皮膚に触れると皮膚や鼻中隔部が犯されたり、肺がんや慢性気管支炎になるという。これは怖い、だから六価クロムの検出された、灰やばいじんを扱う場合はゴム手袋(軍手はダメ)や、鼻まで隠すマスクを使う必要がある。
 

 最近、六価クロム三価クロムに還元できる液(中性)が広島の「㈱ケミカル山本⌋から売りだされている。使用した結果は聞いていないが、これが有効なら六価クロムが見つかった焼却灰やばいじんにはありがたい話である  

 

 

29.炉内の掃除は焼却炉のため。

 

 焼却炉の内部の掃除はユーザーもメーカーも疎かにしてきた。ユーザーは掃除は面倒だという傾向にあるのは判るが、メーカーも掃除が出来る構造にしていない。ことによると、メーカーはどこにばいじんが溜まり易く、どこにマンホールをあければいいのか、判らないのかもしれない。廃掃法の施行規則によれば「ごみ処理施設の維持管理の技術上の基準⌋のごみ処理施設に.冷却設備及び排ガス処理設備にたい積したばいじん除去することと書かれている。 
 

 一次燃焼室の掃除からみれば、空気供給口の周囲のクリンカーである。このクリンカーは発達するので、必ず小さいうちに削っておかないと空気供給口を塞ぐことになる。特に壁がキャスタブルの場合は2週間に一回は必ずチェックすることだ。二次燃焼室は直接的な掃除は不要だが、壁に塩素や重金属が残留物として残る。ガス測定時には綺麗なごみや木くずを燃やして、測定値を良くしようと考えがちだが、残留塩素があるために塩素濃度ダイオキシン濃度が高くなる、と考えておく必要がある。
 

 ダクト中にはばいじんが溜まると、その中で酸が濃縮しダクトが腐食する。ダクトでは燃焼ガスが、特に上方向に流れる部分(エビの部分)が一番ばいじんの溜まり易いところである。他でもダクトが急激に曲がるところが要注意といえる。
 

 間接型(シェル&チューブ)の冷却塔(熱交換器)では、パイプ内に汚れやすい流体を流すのが鉄則であるから、パイプ内の掃除は重要である。熱の交換効率を良くするとともに、ばいじんの付着による腐食を少なくする必要がある。特に焼却炉の燃焼ガス冷却用の熱交換器は、集塵機よりも前にあるものだから、ばいじんが多いので注意を要するところだ。熱交換器はパイプ内の掃除を定期的に行う必要があり、熱交換器を縦にした場合でも、シェルのヘッド部分が容易に開くようにして、掃除をする人のステージを設けておく必要がある。
 

 特に焼却炉の排ガス処理設備の掃除は定期的に行うことは、炉の運転側も注意しなければならないが、焼却炉メーカー側も、掃除出来るような構造にしておく必要がある。その為には何処にばいじんが溜まり易いかを知り、マンホールの位置を決めることだ。ばいじんの掃除を頻繁に、容易に出来るようにしておけば焼却炉は間違いなく2倍の寿命を保つことが出来る。